税を考える週間2009
昨日11月11日からは「税を考える週間」。各地で説明会やら講演会やらイータ君のテレビCMやら、賑やかにイベントが行われています。
これに合わせて日税連(日本税理士会連合会)は、昨日の日経に上戸彩ちゃんの大きな全面広告を掲載。「私は税理士に聞かなかった」4億円申告漏れの茂木先生の記事と並んで掲載されれば、さぞ面白かったでしょう。
昨日11月11日からは「税を考える週間」。各地で説明会やら講演会やらイータ君のテレビCMやら、賑やかにイベントが行われています。
これに合わせて日税連(日本税理士会連合会)は、昨日の日経に上戸彩ちゃんの大きな全面広告を掲載。「私は税理士に聞かなかった」4億円申告漏れの茂木先生の記事と並んで掲載されれば、さぞ面白かったでしょう。
公表された民主党のマニフェストをざっと眺めてみました。
「明治維新以来続いた中央集権体制云々」という歴史の教科書みたいなフレーズまであったりして、ひょっとして本気でこの国の流れを変えようとしているんでしょうか、意気込みは感じられます。
税制的には、インパクトのある公約が目に付きます。詳細は「INDEX2009」という政策集に掲げられていますが、この多岐に渡る内容と分量に対し、自民党がどんな対抗案を出してくるのか、興味があります。
目に付いた項目。
・租税特別措置の見直し
(総論賛成・各論反対の嵐でしょう)
・中小企業の法人税率を18%から11%へ引き下げ
(儲かっている中小企業にとっては朗報ですが)
・いわゆるオーナー課税の廃止
(これはあったり前、当然でしょう。官僚が考え出したこんな変な税制を承認したのは自民党と公明党なんですよね)
・公的年金等控除最低保障140万円・老年者控除50万円の復活
(年金受給世代には、かなりうれしい話)
・税と社会保障制度共通の番号制度の導入
(いわゆる納税者番号制度ですね。賛否両論あるでしょう)
・子ども手当創設の財源として配偶者控除の廃止(国税のみ)
(これは難しいところか。国民は、もらった手当のありがたみはすぐ忘れるけれど、税負担の増加による痛税感は後々まで根に持つ、という傾向があるように思うので、民主党のアキレス腱になるような気がします)
・相続税の遺産課税方式への転換
(今までの流れの継承ですね)
・納税者権利憲章の制定
(今までなかったのですね)
・給与所得者の確定申告の原則化(年末調整も選択可)
(もし実現したら、実務上は、しばらく混乱するかも)
・更正の請求の期間制限(現状1年)の見直し
(課税当局が嫌がりそうですね)
・起業・ベンチャー支援として、100万社起業を目指す
(100万社?)
書店の雑誌コーナーで平積みになっている週刊ダイヤモンドの最新号は「IFRS襲来!」。
IFRS関連の書籍は特に今年になってからよく見かけるようになりましたが、ダイヤモンド社はタイミングを見計らっていたのでしょう、6月の金融庁企業会計審議会の中間報告を受け、満を持しての特集といった感があります。
この特集は入門編と実務編に分かれているのですが、わずか14ページの入門編に「50分でわかるIFRS」とタイトルが付いています。ざっと読むなら5分もかからないところですが、「流し読まずに、50分くらいかけてじっくり読んでくれ」という記者の自信の表れなのでしょう。力の入った特集です。
会計と同時に興味深いのが、税務への影響。例えば、ちょうど同じ時期に公表された公認会計士協会の「平成22年度税制改正意見・要望書」を見ますと、重要要望事項の筆頭として、IFRSの法人税制への影響が言及されています。要約すると、会計基準と税法基準の乖離が大きくなってくるので、「我が国の損金経理要件を中心とする確定決算主義の在り方が大きな転換点に立っている。損金経理要件を中心とする確定決算主義の在り方を弾力的に見直されたい。」という主張です。
IFRSへの対応が迫られる上場企業と、国際的な会計の潮流とはまったく無縁な多くの中小企業を、法人税法という一つの法体系の中で括っていくには、どうしたらいいのでしょうね。
数年前に公認会計士の試験制度が変わり、以前に比べてかなり合格しやすくなっているとのこと。金融庁などは行政の目標としてしばらくは毎年3,000人の合格を目指すと言っているようです。
ところで写真は1980年ころのTACの経済学のテキスト「徹底解説・ミクロ経済学」「同・マクロ経済学」の裏表紙です。そこに、受験校のPRとして当時の会計士二次試験の合格者数(とTACの受講者数)が氏名とともに載っていますが、これを見ますと
1979年 283名
1980年 252名
1981年 241名
となっており、なんと現在の10分の1以下、いかに当時の二次試験が難関であったかが想像つきます。
はたして金融庁の掲げる目標通りの合格者が維持されるかどうか疑問もありますが、今が合格のチャンスであることには違いないでしょう。ただし早めに。
政府・与党が追加経済対策を決定、その中に一部減税措置も含まれています。
その目玉は贈与税でしょうが、住宅の購入や増改築に限定、しかも直系尊属からのみ、500万円まで。現行の基礎控除110万円と合わせて610万円の非課税枠となるわけですが、すでに3500万円という相続時精算課税という制度もあるわけだし、何だか小手先だなあ、という感は否めません。これは理屈ではなく感覚ですが、思い切って贈与税は無税、というぐらいのことをやらないと、経済対策にはならないんじゃないでしょうか。
この贈与税減税に対して「金持ち優遇」との批判もあるようですが(「金持ち」の定義がよくわかりませんが)、本当の金持ちにとっては、そもそもこの程度の減税策ではまったくインセンティブにはならないでしょう。
折しも発売中の経済誌は、日経ビジネスが「1300万人が抱えるマンションリスク」、東洋経済が「どこまで下がる? 不動産・マンション」という特集。今が底値買いのチャンスと見るか、先行き不透明感から今は購入に踏み切らないか。見方は様々でしょうが、将来への不安が強すぎる現在、贈与税減税部分に限っていえば、この経済対策は、あまり効果がないように思えます。
17日の日経の記事より。
「民主 税制で対決・・・民主党は税制改革で政府・与党との対決姿勢を鮮明にする。」
ということで、与党と民主党の税制改革案の対決が注目です。民主党税調の会長は大蔵省OBで元蔵相の藤井裕久氏なので、現実性のある改正案が提示されると予想されますが、民主党は先だつ15日に法人税法の一部改正案および租税特別措置法の一部改正案の2法案を参議院に提出しています。
改正点は次の4点。
・外国子会社からの受取配当の益金不算入
・特殊支配同族会社の役員給与の損金不算入制度の廃止
・欠損金の繰戻し還付の今年度からの復活
・中小企業に係る法人税率の半減
中小企業に対する軽減税率の引き下げは
与党案 22%から18%へ、21年4月から2年間の時限的引下げ
民主案 22%から11%へ、21年2月から2年2ヶ月間の時限的引下げ
と大幅に異なっています。
ポイントは何といっても悪名高き「法人税法35条 特殊支配同族会社の役員給与の損金不算入制度(オーナー課税)」の廃止を昨年に引き続いて提案している点で、全国の中小企業経営者をはじめ以前からこの廃止を主張している税理士会や法人会、商工会議所は、この部分だけに限って言えば民主党を支持すべきとなるわけですが、一般国民にはなじみがない論点なのでマスコミ報道もなされず目立った議論も行われないでしょうから、与党側としては恐るるに足らずかもしれません。(日経などは官僚と組んでこの税制の導入のバックアップをしたフシもありますし)
12日に、与党の平成21年度税制改正大綱が公表されました。景気の下降局面の長期化・深刻化という背景のもと、今までの税制改正の流れに逆行する部分も見受けられる内容ですが、ここはやむを得ないところなのでしょう。基本的考え方として、「内需刺激のための大胆かつ柔軟な減税措置」ということで5つのポイントが列挙されています。
1.やはりまずは国内の住宅投資でしょう、ということで、住宅ローン減税と土地の譲渡益課税に手当て。
2.やはりわが国の自慢は自動車でしょう、ということで、自動車の買換・購入需要の促進策。
3.やはり日本は工業力でしょう、ということで、企業の設備投資と海外利益の還流策。
4.やはり支えているのは中小企業でしょう、ということで、税率引き下げ・繰戻し還付・事業承継。
5.やはり何だかんだ言っても金融市場も大事でしょう、ということで、現状の維持・拡大。
中小企業税制。
軽減税率の引き下げは、21年4月以降終了事業年度から(つまり4月決算法人から)。
欠損金の繰戻し還付復活は、既報の通り21年2月以降終了事業年度から(つまり2月決算法人から)。
悪評高い「特殊支配同族会社の役員給与の損金不算入制度」については、「その適用状況を引き続き注視する」とのこと。注視なんかしてないで直ちに中止して下さい!
5000円の電子申告税額控除。
2年間延長。結局まだ思惑通りの普及率に至りそうにないのでしょう。延長は朗報ですが、一人1回きりなんて言ってると、昨年この控除を受けた人は、また紙の申告に戻っちゃうよ?
介護医療保険料控除。
生命保険料控除を改組し、介護医療保険料控除として分離させ「一般生命保険・個人年金保険・介護医療保険」の3本建てとし、控除限度を4万円に引き下げてトータルでは12万円に。これって事務の手間が面倒じゃないですか、と思ってよく読むと、平成24年分の所得税から適用とのこと。なんか保険会社や年末調整を行う企業の手間を増やすだけのような気もしますが。
昨日の日経夕刊一面は、「海外子会社からの配当を非課税に」という自民党税調の方針のニュース。先の政府税調の答申にもありましたね。
その隣には、「金融所得一体課税の導入を一年先送り」というニュース。
今日の日経朝刊一面には、中小企業支援策として「欠損金の繰り戻し還付」と「軽減税率の税率引き下げ」というニュース。長らく停止されていた「繰り戻し還付」の復活は、諸団体からの税制改正要望事項に常に含まれていた項目ですが、やっと実現、というより、この経済状況ではやむを得ないでしょう。「2009年2月以降に決算期を迎える企業を対象」とのことですが、その変則ぶりにも、緊急事態の様相が表れているようです。
政府税制調査会の「平成21年度の税制改正に関する答申」が出たので早速目を通してみました。
「えっ、どうしちゃったの?」というくらい薄っぺらくて、 本文はわずか8ページ、文字にして約5800字。名前を連ねている委員が38名いるので、単純に頭数で割ると一人当たり約150字程度で、その量がどのくらいかというと、このブログの文頭から「ここ」までが約160字くらいだから、まあそんな感じです。
本文の中には、能書きのような現状分析や昨年の答申の引用も含まれているので、実質的内容はほとんどなく、これが答申といえるのかは疑問のあるところですが、具体的に述べているのは次の3点のようです。
1.相続税 国民の理解を得ながら議論を深めよう!
2.国際課税 企業の海外での利益を国内に環流させよう!
3.固定資産税 ほぼ今のままでOKだね!
日経なんか今朝の5面で小さく取り上げているだけでした。(ちなみに昨年なんかは朝刊1面トップでしたのに)
年末も近づき、税制改正の動向が気になる時期ですが、関連する記事が二つ。
まず読売。例によって主語が曖昧な日本語です。
「政府税制調査会が28日に麻生首相に提出する2009年度税制改正答申の全容が明らかになった。
焦点だった消費税の税率引き上げについては具体的な言及を避け、政府が年末までに策定する税制抜本改革の「中期プログラム」で、改革の「基本骨格」として「消費税を含む抜本改革を速やかに開始し、時々の経済状況をにらみつつ、2010年代半ばまでに段階的に実行する」との方針を盛り込む考えを示すにとどめた。
そのうえで、「抜本改革の実施時期を明らかにしたプログラムとすることを強く求めたい」と提言した。
答申は、「昨年の答申に示した各税目の改革の考え方は揺るぎなく堅持すべきと考える」と指摘。このほか、相続税の課税方式を見直すべきとの考えや、海外子会社の利益を日本国内に還流しやすくする国際課税を創設する方針なども示した。」
以上は政府税調の話。なるほど、海外子会社からの配当課税がどうなるかは注目点の一つでしたが、相続税の見直しもこの分では予定通りやるのかな、と思っていたら、日経の夕刊一面から『相続税の抜本改革 先送り』の見出しが目に飛び込んできました。こちらは自民税調の話です。
で、その日経。
「自民党税制調査会は27日、2009年度税制改正の焦点だった相続税の抜本改革を先送りする方針を固めた。景気後退局面を迎えるなかで、最高税率の引き上げや課税対象の拡大、課税方式の変更は困難と判断した。来月中旬にまとめる09年度税制改正大綱にこの方針を盛り込む。
同日午前の党税調正副会長・顧問らの会合は先送り論が続出。税調幹部は会合後、「デメリットが多過ぎる。とても来年度税制改正で結論が出そうにない」と語った。」
要は、財務省は、格差問題への対処(と税収確保)のため資産の再配分を進めるべく、相続税の仕組み全体の見直しと最高税率の引き上げを目論んでおり、多分すでに法案まで仕上がりつつあったと思われますが、このとんでもない経済状況の中、政治的には「デメリットが多過ぎる!」ということで先送りになりそうだ、ということですね。
デメリットといっても、亡くなる人の95%は相続税に無縁なわけですから、消費税の議論と違って、人数的にも99%以上の国民には相続税の改正など無関係の話。やはり「増税」という言葉が景気に与える心理的影響が大きすぎるのでしょうか。