2011.01.31

死都日本

九州の霧島連山・新燃岳で、噴火が続いているようですが、似たような状況をどこかで読んだと思ったら、「死都日本」」(石黒耀 ・講談社文庫)でした。

破局噴火の恐ろしさ、地球環境への影響の甚大さ、火山灰が飛散する状況下での航空機の脆さなどがよくわかります。

大きな被害を出すことなく沈静化してもらいたいものです。

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2010.12.05

天文年鑑の季節

あるショッピングビルに車で行った際、駐車料がわりに何か買わないと、ということで、書店に寄って、毎年この時期になると買う来年度版の「天文年鑑2011」を購入。

天文年鑑を初めて手にしたのは、1971年の火星大接近のときでした。以来、この本だけは毎年しっかりと買い続けて約40年。

日常生活に特に必要というわけではないのですが、掲載されている数字や記号の羅列を眺めていると、何となく宇宙探査の先端を垣間見ているようなワクワクした気分になるから不思議です。

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2010.09.30

日本人のための戦略的思考入門

9月も今日で終わり。

今月、国内の空気を一変させた出来事といえば、やはり尖閣諸島周辺海域での中国漁船の衝突事件でしょう。

現政権の外交・国防に対する能力や見識が問われている出来事でもありますが、このようなときにオススメの本が、「日本人のための戦略的思考入門(孫崎亨・祥伝社新書)」。

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日本人のための戦略的思考入門

尖閣諸島についても、今回の事件を予言するかのごとく、以下のように述べられています。

・日米安保条約第5条は、尖閣諸島に適用される。
・尖閣の主権は係争中であり、米国は主権問題には中立である。
・尖閣が侵略された場合、米軍は自動的には関与せず、米議会の承認を待つ。
・条約上は、島嶼部の防衛は日米共同ではなく日本単独の役割である。
・もし中国が尖閣を侵略し自衛隊が防衛に成功すれば、米国は参戦するまでもない。
・もし中国が尖閣を侵略し自衛隊が防衛に失敗すれば、尖閣は中国領になるので、安保条約は適用されず、米国は参戦しない。
「つまり、自衛隊が勝っても負けても、米軍は出る必要がない。見事ではないか。」

ということのようです。

「米国が実際に約束していることと、米国が日本に与えている印象とは明らかに違う。対米追従論者は約束ではなく、印象を拠り所にしている。しかし、米国はしたたかに計算している。自分の利益であれば、同盟を盾に日本を動かす。自分の利益に反すれば、巧妙に身を避ける。当然である。」
という米国の行動原理を、わが国の国民は理解する必要があります。

同じ著者の「日米同盟の正体(講談社現代新書)」とともに、必読の書といえるでしょう。

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2010.08.16

永遠のゼロ

毎年8月になると、どうしても先の戦争がらみの小説に手を出してしまいます。今年は「永遠の0」(講談社文庫)。

タイトルの「0」とは旧日本軍の零式艦上戦闘機、いわゆるゼロ戦のことで、そのパイロットだった祖父の生き様を調べるため、孫達が生き残った元軍人達を尋ね歩くというお話し。

現代と過去が交錯するストーリーはきれいに収束し、プロローグと対をなすエピローグも効果的な余韻を残します。戦友たちの語る過去の戦場の話に重みがあるだけに、現代の主人公達の私的なエピソードがちょっと陳腐に感じられるのが難点ですが、この時期に読むにはオススメでしょう。

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2010.05.10

夕ばえ作戦

今日は日本でのiPadの予約開始日です。店頭に行列もできているようですが、ソフトバンクの3Gモデルである必要もないのでアップルストアで十分、ということで、早速予約を入れてしまいました。

このiPadの発売に関連して、電子書籍の普及と紙の書籍の行く末があちこちで話題になっています。

電子出版が広まるのはいいことでしょうし、読みやすい端末が開発されるのも大歓迎です。

ここで気になるのは、今までに発行された膨大な紙媒体のこと。毎日のように大量の新刊書が発行され、多くは再版されることもなく見捨てられてゆきます。わずか数年前の話題の書が、現在では絶版で入手不能ということもめずらしくないようです。このような過去の膨大なコンテンツは、今後どう扱われていくのでしょうか。

例えばそのような過去のコンテンツの名作の一つがこれ。

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現代の中学生が江戸時代へタイプスリップし忍者と戦うという、ジュヴナイルSFの古典です。

戦う相手は、前々回のエントリーでも触れた風魔忍者。白土三平の劇画にも風魔は登場していましたが、私たちの世代にとって風魔忍者の存在が身近になったのは、何といってもこの作品のおかげでしょう。特にNHKの少年ドラマシリーズの一つとしてテレビドラマ化された作品は、今は「笑点」で座布団を配っている(主人公を演じた)山田くんの絶妙なキャラクターもあって、大人気でありました。私は当時中学生でしたが、少年ドラマシリーズの中でもこの作品はかなり人気が高かったと思います。

かつでは、鶴書房盛光社のSFベストセラーズというシリーズで街のどこの書店でも手に入ったこういう名作が、幸いこれはハルキ文庫というシリーズに取り上げられて入手可能となりましたが(ただしハルキ文庫自体が、かなり大きな書店へ行かないと置いていない)、多くは古書店を探さなくては読むことができなくなってしまいました。

電子書籍の普及が、このような過去の作品の復権に繋がって欲しいものです。

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2010.05.07

風魔

昨日オススメした「忍者烈伝」では忍者くずれの山賊として登場する風魔一族。小田原北条家の忍びとして箱根を根城に活躍したといわれる忍者集団です。頭領の名は、風間小太郎。

その小太郎の活躍を描いたのが、そのタイトルもズバリ「風魔(上・中・下)」。

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主人公の小太郎は、背が高く力もあって、強くて、いい人。このキャラクターに馴染むかどうかで、好みが分かれるところでしょう。

敵役は、伊賀の忍びを率いる服部半蔵と、その後を継いだ柳生又右衛門。その他著名な人物達が入り乱れる物語は、快作とまでは言えないものの、関東方から見た戦国時代の歴史の復習ということで、結局最後まで読んでしまいました。

ラストは、なるほどそう締めるか、というきれいな終わり方で、決してつまらない作品ではないのですが、文体の好みなど、相性を選ぶ作家かもしれません。

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2010.05.06

忍者烈伝

連休中の読書として、以前、書店の時代小説の棚で面白そうな気を放っていた忍者本を見つけ買っておいたこれを選択。

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主人公は、とび加藤こと加藤段蔵と、伊賀の忍び、上野ノ左。

加藤段蔵と言えば、小池一夫・小島剛夕コンビの大傑作「半蔵の門」に登場する悪役イメージが強いのですが、本書での段蔵はもっと若い。白土三平の忍法秘話「妙活」で描かれた段蔵に近いでしょうか。(「妙活」では、本書にも登場する牛を呑むトリックが、漫画的にわかりやすく描かれています)

荒唐無稽さを排した大人の忍者の活躍を味わいながら、戦国時代の通史が復習できます。オススメ。

ちなみに続編も出ていて、こちらの主人公は、忍びというよりむしろ幻術師である果心居士と、戦国大名・松永弾正秀久。伊賀の忍びの活躍も描かれますが、信長の天下統一に至る時代背景の説明に多くの頁が費やされ、一巻目に比べると、やや動きがおとなしめ。2冊くらいに分けてもっとじっくりと書いてくれた方がよかったかもしれないですね。キャラクターがいいので、ちょっともったいない。

ともかく第三巻もいずれ出るようなので、楽しみです。

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2009.12.05

税制改革と官僚制

11月から12月にかけて連日のように政府税調が開催され、膨大な資料を基に議論が交わされているようですが、今週の日経朝刊に連載されていた経済教室のテーマは「税制再考」。昨日は東大の加藤淳子教授による税を巡る政策決定プロセスの概観でした。

そこで今回のオススメは、その加藤教授の「税制改革と官僚制」(東京大学出版会)。オアゾの丸善の棚で「書物復権・8出版社共同復刊」という帯とともに目に飛び込んできたこの本、値段が値段なので少し逡巡しましたが、本が放つ「気」には逆らえませんでした。

著者の専門は政治学なので、焦点は税制の内容そのものではなく、政治家と官僚との関係、政党内における意思決定と官僚の影響力の行使との関係についてが叙述の中心となっています。時代は1970年代の大平政権から1990年代の自社さ連立政権まで。

読み物ではなく論文に近いので一般向けとは言い難いですが、資料としてはもちろん、税制改革の視点から見た自民党政権下における現代日本の政治史として読んでも、興味深いものがあります。

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税制改革と官僚制

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2009.10.20

奥多摩登山考・山岳救助隊日誌

先日、ちょっとした機会があって奥多摩あたりへ行ったのですが、その帰りに奥多摩湖畔、小河内ダムの前にある「水と緑のふれあい館」という東京都水道局が運営しているPR施設に立ち寄ってみました。

山と湖に囲まれ気持ちのいい立地ですが、施設としての規模は大きくありません。短時間でざっと見て廻り、最後に売店に足を踏み入れブラブラ眺めていると、お菓子類に混じって書籍や雑誌のコーナーがあります。そこで目に飛び込んできたのが「奥多摩登山考」という一見ガイドブック風の単行本でした。手にとってパラパラ眺めるうち、これは!という直感が働き、隣にあった続編らしき本と一緒に直ちにレジへ。帰宅後じっくり読んでみましたが、勘は正しくやはりオススメの本でした。

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金副隊長の山岳救助隊日誌

著者は現職の警察官、それも山岳救助隊の副隊長をなさっている方です。ジャンルとしては山岳エッセイというのでしょうか。要は山で遭難した登山者の救助記録集です。著者の所属が青梅警察署であるため、舞台は御嶽駅から奥多摩駅に至る青梅線沿線の山や谷、さらに石尾根や日原川から雲取山に至る山深いエリアが中心。歩いたことのあるコースも随所に出てきて懐かしさを感じると同時に、山の危険性を再認識させられました。

雨具やヘッドランプを持たずに山へ入る登山者が多いという記述にはちょっとびっくり。「紅葉が盛りなので朝の青梅線は登山者でいっぱいだった。この中でヘッドランプを持っている人は何人いるだろう。おそらく80パーセントは持っていないだろう」と著者は言います。そして「日が暮れて下山できなくなった」という110番を受けては、救出に向かうのです。私もかつて二度ほど救助隊の活動に立ち会ったことがありますが、本当に大変な仕事です。「山で身体を鍛えるのではない。身体を鍛えてから山に登れ」「東京の山だって、観光の延長で登れるようなところじゃない。山をナメちゃいけないよ」という著者の言葉は肝に銘じておく必要があります。

「奥多摩登山考」は現地販売のみのようですが、続編の「金副隊長の山岳救助隊日誌」は角川学芸ブックスの一冊として書店でも手に入ります。奥多摩へ足を踏み入れるハイカーから登山者まで、ぜひ目を通しておくべき良書でしょう。

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2009.09.18

木枯し紋次郎

以前、シャーロック・ホームズの新訳を少しずつ読んだ話を書きましたが、その後、似たような短編ものの大作がないかと思って見つけたのが、笹沢左保の「木枯し紋次郎」シリーズです。

中村敦夫のテレビシリーズがあまりにも有名ですが、原作の方もかなりいい。もともと笹沢左保には「見かえり峠の落日」という股旅ものの傑作短編集があって、この出来がまたすばらしく(講談社の大衆文学館という文庫シリーズに入っていました。絶版になってしまったのが惜しい)、これが木枯し紋次郎の原点であると言われており、ならばいつかは紋次郎も読まねばなるまいと思っていたのですが、笹沢左保の作品って、今では手に入りづらいのですね。

光文社時代小説文庫に入っている紋次郎シリーズ全15巻、かなり大きな書店でも置いておらず、ようやく川崎のあおい書店で全巻揃っているのを見つけ、5冊ずつ3回に分けて買っては少しずつ読んできました。(あおい書店の棚は常に15冊全巻が揃っていました)

どの作品も「意外な展開」というミステリのテイストがたっぷりで、とにかく読んでのお楽しみなのですが、紋次郎が斬るわ刺すわで敵を殺すこと殺すこと、15巻で一体何人をあの世へ送ったのでしょうか。中村主水の比ではありません。

ということで、いよいよ読書の秋。一気に読まず、一編ずつゆっくりと読みましょう。

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