2006.01.21

ライブドアと弥生

世間(というよりマスコミ)はライブドアの問題で大騒ぎですが、マンション強度偽装問題の証人喚問の日にわざわざぶつけなくても、とほとんどの国民が思っているところでしょうから、かえって逆効果ですよね。

さてライブドアの件、今後この会社がどういう行く末を辿るのか注目ですが、職業柄気になるのは、税理士法人ライブドアとナンバー2で堀江氏の懐刀といわれる顧問税理士出身の宮内亮治CFOです。彼自身すでに税理士業務は行っていないでしょうが、まだ東京税理士会の会員のはずですし、将来性のある起業家と手を取り合って彼のようになることを夢見ている若手税理士も多くいることでしょう。

ライブドアといえば、小規模企業向け会計ソフトの「弥生」を傘下におさめています。とても良くできたソフトで、当事務所でも推奨していますが、難点が一つ。毎年のようにバーションアップを繰り返すのは目をつぶるとして、バージョン「04」でほぼ会計ソフトとして完成型に到達していたのに、ライブドアグループになってからの「05」で使い勝手が極めて悪くなってしまったこと。廉価版として「04」をラインアップに残して欲しかったですね。「弥生」の開発スタッフには、今回の騒動を乗り越え、より使い勝手のいい会計ソフトを供給し続けてほしいところです。

ライブドアとしては、「ネット+中小向け会計・給与などの業務ソフト+ファイナンス」という方向で一つの戦略(堀江氏ではなく宮内氏の)を持っていたのでしょうが、今回の件でそのプランも頓挫してしまうのでしょうか。

| | TrackBack (1)

2005.09.15

起業/資本金はいくら必要? 4

起業したばかりの社長さんの相談を受けた知人の税理士の話。

有限会社で資本金はわずか数十万円。最低資本金の300万円を下回っていますから、もちろん1円起業の特例を使っています。しかし事業に必要なお金は当然それで足りるわけがなく、設立後すぐに社長さん個人から1000万円以上の資金を借入れているそうです。

1円起業にした理由を社長に尋ねると、「よくわからないのでとにかく行政書士さんに勧められた通りにした」とのこと。事業内容からみても資本金は大きいにこしたことはないケースなので、資金が潤沢にあるのなら、なぜ最初から、通常の有限会社か、あるいは思い切って株式会社にしなかったのか、首をかしげる事例だとのことでした。

050915ところであいかわらず起業系の書籍はブームのようで、今日は、「「身の丈起業」のすすめ」をご紹介。

タイトルからは「株式公開を目指すなんて背伸びするな」とたしなめているように聞こえますが、内容はいたって真っ当。あとがきにあるように、「ことさら起業を賛美したり、必要以上の警告を発したり」せず、起業前から上場までの心がけや注意点を平易に解説しています。アクの強い起業本に疲れたときにどうぞ。

| | TrackBack (0)

2005.06.18

起業/資本金はいくら必要? 3

1円起業などで、自分で手続きのすべてを行ってコストを安くあげようという方も多いと思います。「お金がないからやむを得す1円起業を選ぶのであって、専門家に頼む予算があるくらいなら、きちんと最低資本金以上で起業するよ!」という声が聞こえてきそうです。

一方で、次のような意見もあることをご紹介しておきましょう。

「書店に行くと『会社の作り方』といったタイトルでたくさん類書が並んでいる。しかし、これから会社を作ってお金儲けをしていこうという人にとって、そんな本は何の意味もない。お金儲けをしようという人が、単純作業に時間を費やすべきではない。(司法書士など専門家に頼みなさい!) 司法書士に払うお金をケチっているようでは事業家としての未来はない。(設立手続などを)すべて自分でやった、一銭もかからなかったと自慢した人で、ビジネスに成功した人を、今まで見たことがない。」(瀬川博美 あなたの会社をつくりなさい!―設立から事業成功までの18の鉄則

もっとも、かのホリエモン氏は「有限会社の作り方」といった本を参考に自分で会社を作ったそうですから、例外もあるわけです。しかし彼は一銭もかからなかったことを自慢してはいませんし、きちんと事業プランに見合った資本金を用意してスタートしていますので、単にコストをケチっただけ、というわけではないでしょう。

堀江氏は「最低6ケ月分の運転資金を資本金にすること」「税務や会計は専門の税理士に任せること」を知っただけでもその本を読んだ価値があった、と述べています。会社設立や運営手続きの概略をつかむためにも、起業を考えている方は、そのような本をひととおり読んでみても無駄にはならないはずです。そのうえで、手続きを自分でやるも良し、専門家に任せるも良し、ですが、あくまで目的は「会社を作ること」ではなく「起業すること・ビジネスを起ち上げること」にあることは肝に銘じておきましょう。

| | TrackBack (1)

2005.06.14

起業/資本金はいくら必要? 2

これは聞いた話ですが・・・
1円起業制度ができたとき、制度を考えた担当者の間でこういう話があったそうです。
「そんなミジンコみたいな会社をいっぱい作らせて、どうするの?」
「たとえほとんどが死んでしまっても、ほんの数匹でも大きくなってくれれば、それでいいのでは」
ということで、1円会社のことを一部ではミジンコ会社と呼ぶそうです。

さて本題。
資本金はいくら必要かという話に入りましょう。
「家業」を単に会社組織にするだけなら別ですが、「事業」のスタートであるならば、常識的に考えれば、やはり運転資金として最低でも100万円前後のキャッシュを用意しなくては、会社を稼動させることは現実問題として難しいのではないのでしょうか。現行制度での有限会社の最低300万円というラインは妥当な感じがします。1円起業の設立を数多く手がけている知り合いの行政書士さんも、「アイデアや情報を売るビジネスなら1円起業も不可能ではないけれど、物販などの場合は、やはり元手としてある程度のキャッシュが必要なので、1円起業はやめるようにアドバイスしている」とのことです。

ここでちょっと、起業の際の資本金についての見解を、手許にあった本からいくつかご紹介しましょう。

Continue reading "起業/資本金はいくら必要? 2"

| | TrackBack (1)

2005.06.10

起業/資本金はいくら必要? 1

起業ブームにからんだ話題です。

自分も起業しよう! 会社を作ろう! となった場合、いったい資本金はいくら用意すればいいのでしょうか? 現行の法律では、株式会社は最低1000万円、有限会社なら最低300万円、特例としていわゆる1円起業の制度を使えば最低1円です。来年新しい会社法が施行された後は、1円以上であれば制約なし。

この最低資本金の撤廃に関しては、国会の法務委員会での議事録を見ても「本当に大丈夫なのか? ダミー会社・怪しい会社の乱立がおこるのではないか? そもそも300万や1000万のお金を集められないような人が会社をやっていけるのか?」という疑問が何人もの委員から出されています。

結局、会社の価値や評価は資本金で決まるものではない、例えば政府系金融機関の融資基準も資本金の多寡といった形式基準は採用していない、ということで、1円でもOKとなったわけですが、忘れていけないのは、
「今までは債権者保護という観点から最低資本金として一定額を求めていた。しかしそれを撤廃した以上、今まで実態としてあまり守られていなかった財政状態を開示する公示制度を、株式会社制度の生命ということで強く求めていく。守られない場合の過料の制裁も徹底していく」(法務省)
という発言です。見過ごされがちな点ですので注意が必要です。

| | TrackBack (0)

2005.06.02

起業ブーム?

050602世は起業ブームだといいます。起業や副業を煽る、もとい奨励する出版物もあふれています。職業柄ついつい手にして読んでしまい、なるほどうまく仕掛けているなあと感心することも多いのですが、新会社法により最低資本金制度も撤廃され、国を挙げて起業を奨励しているのですから、ブームになってもらわなくては困るわけですね。

ところで起業支援の一つとして、この4月から施行されている「中小企業新事業活動促進法」があります。個人がネットを使って小さな起業をする週末起業とか情報起業と呼ばれるものよりはもう少し重厚な事業を想定していると思われますが、元締めである中小企業庁が盛んにPRしています。中小企業向けのさまざまな施策がまとめられたガイドブック(写真の青い冊子。150ページ以上ある)もでています。同じものはネットでもアップされていますので、興味ある方はこちらからどうぞ。

■「平成17年度版 中小企業施策利用ガイドブック」

また中小企業新事業活動促進法については、マンガ形式での解説書があります。

■「マンガでわかる創業・経営革新・新連携ガイドブック」

| | TrackBack (1)

2005.01.12

固定資産税の納期限

12月は、分割納付している固定資産税の第3期分の納期でした。固定資産税はその資産の所在する市町村が課税する税金ですが、東京都23区内においては、特例で都が課税をすることになっています。

23区内のあるお客様の話ですが、御用納めが12月28日だからその日に納めればよいだろうとゆっくり構えていて、当日に何げなく納付書を見たところ、納期限は「12月27日」と書いてあることに気づきました。年が明けてから所用があったついでに都税事務所の窓口で納付したそうですが、その際に一言文句を述べたところ、
「皆さんによく言われるんです。銀行も12月30日まで開いていますからね。でもこれは条例で決まっていることなので・・・」
ゆっくりしていた人は結構いたようです。

話を聞いて東京都都税条例を見ると、確かにこうありました。

(固定資産税の納期)
第129条第1項
 固定資産税の納期は、左のとおりとする。
  第一期 6月1日から同月30日まで
  第二期 9月1日から同月30日まで
  第三期 12月1日から同月27日まで
  第四期 2月1日から同月末日まで

納期限を過ぎた納付書でも金融機関の窓口は受け付けますので1日遅れた程度では実害はないのでしょうが、ここは時代に合わせて改正して欲しいところですね。ちなみに各市の納期限を調べてみると、八王子市は12月27日、武蔵野市は12月28日、横浜市の場合は1月4日となっていました。

| | TrackBack (0)

2005.01.05

続・みずほ銀行に国がプレゼント?

昨日の話題の補足です。

この裁判の一審で国側敗訴の判決を出したのは、「国敗れて三部あり」で知られる東京地裁民事三部の藤山裁判長でしたね。東京地裁は興銀側が提訴した直後に国税庁に和解を勧めていた、判決直後に法務省が国税庁側に「難しいからあきらめたほうがいい」と伝えたにもかかわらず国税庁側は控訴に踏み切った、などという裏話が当時の雑誌で紹介されていたそうです。

昨日のブログを読んだ知人からは「この判決がでた以上、担当していた国税庁の人間を是非、白昼の下で処分していただきたい!」との過激な(しかし国民としてはしごく当然な)感想をいただきましたが、皆さんはどうお感じになりましたか。

| | TrackBack (0)

2005.01.04

みずほ銀行に国がプレゼント?

明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。

新年早々硬い話で恐縮ですが、年末に気になった税務関連の訴訟の記事をご紹介しましょう。96年3月期に旧日本興業銀行(現みずほコーポレート銀行)が行った旧住専に対する不良債権処理(無税償却)を国税当局が否認、興銀側は「大蔵省から処理を迫られ債権放棄を拒むことは不可能だった」と猛反発して争われた事案です。

一審は「社会通念上債権の回収が不能であれば損失処理は可能である」として興銀側勝訴、二審では逆転敗訴となり、今回の最高裁での判断が注目されましたが、結果は旧興銀側の逆転勝訴、国側の全面敗訴が確定しました。

税務上の判断のポイントはここでは触れませんが、気になったのが還付される還付加算金の巨額さです。みずほ側は追徴分1500億円(地方税も含めると2200億円)を仮納付していましたので、勝訴したことによりこれが還付されるわけですが、さらに利息分として還付加算金(税を滞納した場合に課される延滞税の反対に相当するもの)が約600億円(地方税も含めると約1000億円)もプラスされることになります。利率はこの時代になんと4.1~7.3%!

みずほ側は「判決が12月24日なので思わぬクリスマスプレゼント」と喜んでいるようですが(当然ですね)、冷静に考えると「ツケは国民に:国税当局の判断ミスで生じた国民負担」(日経新聞)でもあるわけです。

もう一つ、今回は国側敗訴となりましたが、一般に税務訴訟は納税者の主張が受け入れられる可能性が低いのが現状です。「(今回の訴訟について)国側の代理人となった検事にしても高裁の判事にしても、税務の素人で何もわかっていない」「税務に詳しい裁判官が少ないため調査官という肩書きで国税庁の職員が裁判所に出向し判決の草案を書いている。だから国に不利な判決になるわけがない」(週刊ダイヤモンド1/1号)というコメントが実態を現していますね。

| | TrackBack (0)

2004.12.25

最低資本金制度の撤廃

今月初めに、「法務省の法制審議会会社法(現代化関係)部会が、新しい会社法制に関する要綱案を取りまとめた」というニュースがありました。法案は来年3月に国会への提出が予定されているようですが、目を引くのは「株式会社と有限会社の統合」「設立時の最低資本金の撤廃」でしょうか。これから起業を考えている方にとっては、会社立ち上げ時のハードルが低くなり朗報ですね。

しかし資本金といえば、平成3年施行の改正商法で、株式会社1000万円、有限会社300万円という最低資本金制度が設けられ、それを満たしていない中小企業が増資に四苦八苦したのは記憶に新しいところです。041225当時の解説書を読むと「社会的責任を果たせないペーパーカンパニーまがいの小資本の会社の乱造を防ぐのが狙い」とありますが、わずか十年ちょっとで180度の方向転換。あのときの改正はいったい何だったんでしょう? (写真は、書棚から出てきた当時の対策本)

| | TrackBack (0)

より以前の記事一覧