奥多摩登山考・山岳救助隊日誌
先日、ちょっとした機会があって奥多摩あたりへ行ったのですが、その帰りに奥多摩湖畔、小河内ダムの前にある「水と緑のふれあい館」という東京都水道局が運営しているPR施設に立ち寄ってみました。
山と湖に囲まれ気持ちのいい立地ですが、施設としての規模は大きくありません。短時間でざっと見て廻り、最後に売店に足を踏み入れブラブラ眺めていると、お菓子類に混じって書籍や雑誌のコーナーがあります。そこで目に飛び込んできたのが「奥多摩登山考」という一見ガイドブック風の単行本でした。手にとってパラパラ眺めるうち、これは!という直感が働き、隣にあった続編らしき本と一緒に直ちにレジへ。帰宅後じっくり読んでみましたが、勘は正しくやはりオススメの本でした。
著者は現職の警察官、それも山岳救助隊の副隊長をなさっている方です。ジャンルとしては山岳エッセイというのでしょうか。要は山で遭難した登山者の救助記録集です。著者の所属が青梅警察署であるため、舞台は御嶽駅から奥多摩駅に至る青梅線沿線の山や谷、さらに石尾根や日原川から雲取山に至る山深いエリアが中心。歩いたことのあるコースも随所に出てきて懐かしさを感じると同時に、山の危険性を再認識させられました。
雨具やヘッドランプを持たずに山へ入る登山者が多いという記述にはちょっとびっくり。「紅葉が盛りなので朝の青梅線は登山者でいっぱいだった。この中でヘッドランプを持っている人は何人いるだろう。おそらく80パーセントは持っていないだろう」と著者は言います。そして「日が暮れて下山できなくなった」という110番を受けては、救出に向かうのです。私もかつて二度ほど救助隊の活動に立ち会ったことがありますが、本当に大変な仕事です。「山で身体を鍛えるのではない。身体を鍛えてから山に登れ」「東京の山だって、観光の延長で登れるようなところじゃない。山をナメちゃいけないよ」という著者の言葉は肝に銘じておく必要があります。
「奥多摩登山考」は現地販売のみのようですが、続編の「金副隊長の山岳救助隊日誌」は角川学芸ブックスの一冊として書店でも手に入ります。奥多摩へ足を踏み入れるハイカーから登山者まで、ぜひ目を通しておくべき良書でしょう。