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2008.11.09

松本清張の「遭難」

久々に読んだ松本清張の本。
読もうと思いつつ機会がなかった作品を、30年越しにやっと読むことができました。

081109
遭難 双葉文庫

高校生の頃、山登りをする班(今でいうクラブ活動)に入っていた私は、登山関係の本を学校の図書室で借りては読みふけったりしていたのですが、まだアウトドア雑誌「BE-PAL」も創刊されていない当時、山の入門書などもあまりなく、学校にあったのが、たしか横山厚夫著「登山読本」という定番的入門書と、地形図の読み方の本、山の気象の本のわずか3種類程度でした。

そのうちの、たしか記憶では横山厚夫氏の本だったと思うのですが(もしかしたら違う本かもしれませんが)、その本の中に地図の読み方や重要性について述べた項目があって、そこで「地形図は計画したルートの隣接部分までもちゃんと用意して持っていかなければなりません。それを怠ったケースをトリックとして使った松本清張の「遭難」という有名な小説があって云々・・・」などという感じで本作が紹介されていたのでした。

その当時、松本清張の長編は結構読んでいたのですが、この「遭難」という短編はどの本に載っているかがわからず、読みたいと思いながらずっと気になり続けてたのでした。後になって「黒い画集」という短編集に掲載されていることはわかったものの、結局読む機会がないまま今に至ったわけですが、先日、書店の文庫コーナーの平積みされた山の中から「松本清張・遭難」という表紙の大きな文字がバーンと目に飛び込んできて、思わず手に取ってしまったのでした。

あらすじは知っていたものの、さすが松本清張、読ませます。「夜行列車を待つ登山姿の乗客が、ホームから地下道の階段、通路に二列になって長くすわりこんでいる。」という新宿駅の光景など、夏合宿に行く夜行列車に乗るため夕方に新宿駅に集合し6時間以上も並んだ自分の高校時代を懐かしく思い出してしまいました。メンバーの一人が夜行明けの急な登りでバテていくところや、稜線上の縦走シーンもリアルです。小道具である地図の使い方もさりげない。犯人の仕掛けるトリックというか意図自体には、「点と線」の東京駅13番線ホームのシーンと同様「もしうまくいかなかったらどうするのよ」という弱さがありますが、そこを一気に読ませてしまうのが、松本清張なのですね。

とにかく、30年間のもやもやが解消され、ちょっとすっきりしました。

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