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2008.09.10

スシエコノミー

「きらら」に続いて、スシの話題をもう一つ。

スシバトル漫画「きららの仕事」には、いろいろな必殺握り技が登場し、その技がネタとシャリに与える美味化作用の理論的解説に、なるほど!と感心することしきりだったわけですが、そうは言っても、鮨はやはりネタ次第だろ、という思いもあるわけで、特に代表的鮨ネタであるマグロなど、いかに良い素材・良い部分を仕入れることができるかにより、握りの味もある程度決まってしまうのではないか、だからそういう部位を仕入れるルートを持った銀座の高級鮨屋なぞに行ったことがない私など、まだ本当に美味いマグロの握りを食したことがないのではないか、マグロはそのうち捕れなくなるなどという話も聞くし、マグロの握りを堪能するなら今のうちなのだろうか、今度思い切って銀座に鮨でも食べに行くか、などと思いつつ読んだ本。

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スシエコノミー

タイトルに「スシ」とあるものの、本書の主役はマグロ。1970年代初めに北大西洋のマグロを東京へ空輸するノウハウが生まれてから、スシという料理が世界中に広まるまでの経緯が、鮨職人など飲食業のみならずマグロの流通に携わる人も含めた多くの人々への膨大な取材をもとに描かれています。

本としてのボリュームというよりも翻訳物特有の読みにくさでしょうか、読み終えるにはちょっと時間がかかりましたが、マグロ好きの方なら目を通しておいて損はないでしょう。(私は白身の方が好きです)

ところでマグロが食べられなくなる、という話。一つは乱獲による種の絶滅という問題があるのでしょうが、もう一つは、今やマグロはグローバル経済の中で流通している食材だという現実です。オリンピックの柔道ではないけれど、スシはすでに世界中に広まってしまった料理なので、いくら伝統の握りの技が云々と極東の島国で喚いても、いい食材はより高い値段を出す市場へ流れてしまいます。

本書の最後である登場人物が言います。中国市場を開拓しようとしている日本企業は間違っている、いったん開拓してしまえば、じきに中国人がもっと値をつりあげるだろう、世界の業者は中国向けに最高の食材を出すようになる、日本の消費者の口には質の高い刺身は入らなくなる、あと5年もすれば・・・。

p.s.
海外でのスシといえば、以前、ロンドンのデパートの地下にあったスシのカウンターで、ガリが切れたので日本人の店員に追加を頼んだら、どんぶりに山盛りで出てきて、たまげたことがありましたっけ。でもサーモンはとても美味しかったな。

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