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2008.09.27

相続税の今後

秋になりますと、そろそろ税制改正の動きが気になってきます。

消費税の税率アップが難しそうな状況の中、今回の注目点は、相続税の大改正がどうなるかというところでしょう。昨年の税調の提言から始まって、相続税増税へ向けての流れは出来ていたわけで、主税局は税理士会と何度も意見交換会を開いて実務レベルでの問題点も整理されつつあるようですし、噂ではすでに法案作成に着手という話も聞きますので、あとは、いつどのような形で新体系が姿を現すか待つばかり、といったところです。

財務省としては、消費税増税は今は難しそう、法人税を下げろと言う声もうるさくなってきた、さてどうしよう。そうだ相続税がある。人は必ず死ぬ、つまり相続というのは確実に発生する、しかも金融資産を多く持った高齢者は多い、となると、ここから税をいただくしかない。幸い理論的根拠はバッチリだし、弱者いじめでもないから国民的反発も受けにくい・・・という感じなのでしょう。ホームページ上で、今までいかに相続税の減税をしてきたか、以前は全死亡者の8%近くあった課税件数がいかに半減したか、などを盛んにアピールしています

新しい計算方法や節税などテクニカルな話題はいずれ溢れてくると思いますが、大きく変わる部分として注目しておきたいのは、従来の「亡くなった方の遺産総額がいくらだったのか」という総額把握を前提とした仕組みから、「自分がもらった遺産の分だけ税金を納めてハイおしまい」という相続人各人が中心の仕組みへ、例えるなら家中心から個人中心へと、思想が転換するという点でしょう。

その転換により、遺産分割の場で繰り広げられる人間模様が今後どのように変わっていくのか、ひょっとしたらこの改正が、家というものを尊重してきた日本の文化の一つの終焉をもたらす引き金になるのではないか、そんな風にも思えてきます。

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2008.09.25

法人税率の引き下げ

昨日の日経の小さな記事。

「日本の法人税の実効税率がOECD加盟30カ国中、七年連続で最も高いことが民間の調査でわかった。(中略)経済産業省や日本経団連などは引き下げを求めており、こうした声が一層強くなりそうだ。」
(9月24日・日経)

ここでいう民間の調査とは、KPMGが4月に実施したもの。例によって主語が何なのかよくわかりにくいマスコミ表現ですが、私なりに意訳すると次のようになりましょう。

「大手会計事務所KPMGインターナショナルは、今年4月に実施した調査において、日本の法人税の実効税率が、国税と地方税を合わせて40.7%と、OECD加盟30カ国中、七年連続で最も高いというデータを明らかにしている。こういう状況の中、経済産業省や日本経団連などは、かねてより実効税率の引き下げを求めている。日本経済新聞社としても同様の意見を持っており、こうした意見が、行政や一部財界だけではなく、国民的世論として盛り上がることを、当社は希望している。」

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(経済産業省:中間論点整理の資料より)

政局が落ち着かないこの時期、声高に法人減税を叫ぶと一般的国民感情から反発を招きかねないので、とりあえず様子見という観測気球的ニュアンスが、記事の小ささに表れていると思うのですが、この記事の背景には、9月16日に経済産業省と日本経団連から同時に公表されたレポートがあります。

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2008.09.20

続・続・本のまとめ買い

本のまとめ買いの際に重宝していた丸善が3月でJALカード特約店契約を終了してしまって残念という話を以前書きましたが(特約店だとマイルが2倍貯まる)、本を通販で買う際に重宝していた「JALショッピング powered by Amazon.co.jp」までもが、この9月でサービス終了とのアナウンスがありました。

これは、二年前からJALのショッピングサイトがAmazonと提携して行っているサービスで、JALマイレージ会員がJAL経由で書籍やDVDなどをAmazonで購入するとマイルが貯まるというもの。その際の決済にJALカードを使うとマイルが倍増。店頭にない本をネットでまとめ買いするときなどに利用していましたので、ちょっと残念。今後は紀伊國屋書店BookWebに変更です。

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2008.09.17

自由が丘の書店

先日、所用があって自由が丘へ行った際に、ちょっとだけ時間があったので周辺の書店を駆け足で回りました。

まず、駅南口を降りてすぐ目の前のブックファースト。メルサの地下にあってちょっとお洒落な感じですが店舗は狭い。品揃えもいまいち。次いで踏切を渡ってロータリー前の不二家書店へ。昔からの書店ぽくて雰囲気は悪くないのですが、都心の巨艦店に馴染んだ身としては物足りない。続いてその裏のブックオフ。ここではビジネス・会計・経済・歴史・英語・学習参考書あたりをざっと眺めて特に掘り出し物もなく、最後は、その向かいにある青山ブックセンター。自由が丘店を訪れるのは初めてです。

しかし残念ながらここで時間切れ。じっくり見れば品揃えは面白いのかもしれませんが、あまりオーラを感じない店内で、再訪することはないだろうなと思いながら店内をざっと一巡し、さて帰ろうとビルの階段を降りかけながら、何か頭に引っかかるものがあって、何やら「気」を発散している、とある書棚までUターン。そして手にした本がこれ。

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17歳のための世界と日本の見方―セイゴオ先生の人間文化講義

著者は千夜千冊の松岡先生。高校の社会科のうちの日本史・世界史・倫理社会をセイゴオ先生の視点からまとめ上げて一気に提示した教養書。大学での講義をまとめたもののようで、口語調で親しみやすい。帯には「大人は読んではいけません」とありますが、これはつまり「大人にこそ読んで欲しい」という意味のキャッチであることに違いないわけで、遠慮無く読みましょう。オススメ。

しかし、このように、無意識のうちに本の方から呼び止められるということがたまにあるから、不思議です。

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2008.09.13

鮨屋の人間力

スシネタでもう一冊。

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鮨屋の人間力

著者は有名な四谷「すし匠」のご主人。残念なことに私はまだ訪れたことはありません。文春新書の一冊ですが、ボリュームもなくすぐ読めてしまう。人によっては立ち読みで十分かもしれませんが、内容はオススメです。

鮨のウンチク本ではなく、「鮨屋は人間同士のぶつかり合いで成り立っているさらしの商売」という著者が半生を振り返りつつ、カウンターで対峙する客と鮨職人のコミュニケーション、あるいは河岸や弟子とのやり取りを通して、親方言うところの人間力について語りおろした本です。はじめて彼女を連れてカウンターでお鮨でも食べようという若い人などは、目を通しておいた方がよい本かもしれません。

本書の中で、例のミシュランの覆面調査の実例が挙げられています。
「調査員は、一人でやってきました。毎回違う人が4回来ました。日本人が2人に外国人が2人。外国人が初めて一人でやって来ることは珍しいので、だいたい調査員であることはわかってしまいます。最後に来た調査員は、自ら身分証明書を提示しました。」
食べながらメモをとる人はすぐにそれだとわかるそうで、最近だと携帯に料理の評価をメモするやり方もあるようです。

結局のところ、鮨というのは「素材」「仕事」「食べる場」の三つが一体となって成り立つ料理で、ネタだけ良くても、あるいは握りの技だけあっても、それだけではまだ不十分。やはり最後は、美味しくいただくという場が重要であり、それを左右するのが、お鮨屋さんの人間力ということなのでしょう。

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2008.09.10

スシエコノミー

「きらら」に続いて、スシの話題をもう一つ。

スシバトル漫画「きららの仕事」には、いろいろな必殺握り技が登場し、その技がネタとシャリに与える美味化作用の理論的解説に、なるほど!と感心することしきりだったわけですが、そうは言っても、鮨はやはりネタ次第だろ、という思いもあるわけで、特に代表的鮨ネタであるマグロなど、いかに良い素材・良い部分を仕入れることができるかにより、握りの味もある程度決まってしまうのではないか、だからそういう部位を仕入れるルートを持った銀座の高級鮨屋なぞに行ったことがない私など、まだ本当に美味いマグロの握りを食したことがないのではないか、マグロはそのうち捕れなくなるなどという話も聞くし、マグロの握りを堪能するなら今のうちなのだろうか、今度思い切って銀座に鮨でも食べに行くか、などと思いつつ読んだ本。

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スシエコノミー

タイトルに「スシ」とあるものの、本書の主役はマグロ。1970年代初めに北大西洋のマグロを東京へ空輸するノウハウが生まれてから、スシという料理が世界中に広まるまでの経緯が、鮨職人など飲食業のみならずマグロの流通に携わる人も含めた多くの人々への膨大な取材をもとに描かれています。

本としてのボリュームというよりも翻訳物特有の読みにくさでしょうか、読み終えるにはちょっと時間がかかりましたが、マグロ好きの方なら目を通しておいて損はないでしょう。(私は白身の方が好きです)

ところでマグロが食べられなくなる、という話。一つは乱獲による種の絶滅という問題があるのでしょうが、もう一つは、今やマグロはグローバル経済の中で流通している食材だという現実です。オリンピックの柔道ではないけれど、スシはすでに世界中に広まってしまった料理なので、いくら伝統の握りの技が云々と極東の島国で喚いても、いい食材はより高い値段を出す市場へ流れてしまいます。

本書の最後である登場人物が言います。中国市場を開拓しようとしている日本企業は間違っている、いったん開拓してしまえば、じきに中国人がもっと値をつりあげるだろう、世界の業者は中国向けに最高の食材を出すようになる、日本の消費者の口には質の高い刺身は入らなくなる、あと5年もすれば・・・。

p.s.
海外でのスシといえば、以前、ロンドンのデパートの地下にあったスシのカウンターで、ガリが切れたので日本人の店員に追加を頼んだら、どんぶりに山盛りで出てきて、たまげたことがありましたっけ。でもサーモンはとても美味しかったな。

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2008.09.08

続・秋を迎えて

法人税収がマイナスになったことに触れた前回のエントリーにトラックバックがついていたので、チェックしてみました。
無関係なトラックバックは気づいた都度削除しているので、今回もその類と思って読んでみると、匿名だけどまじめな社会時評のサイトのようです。

しかし、どうやらそのブログの主は、法人税収がマイナスということについて、国が企業に対して一種の補助をしているに違いない、と勘違いされているようです。

「企業は納付した税金以上の還付金を受け取っているということだ。これは国民から徴収した税金を企業に還流していることに他ならない。企業は何の努力もなく課税外の利益を得ている。このような不平等な法人税制は直ちにあらためるべきだ」という趣旨のことを書かれていますが、記事にはちゃんと『3月決算企業が昨年中に納めた法人税の還付額が膨らみ』と説明がありますし、税収も単月度データです。

もしかしたら報道記事の「見出し」だけ読んで勝手に解釈されたのかもしれませんが、ブログとして公表するならもう少し勉強して調べてから書けばいいのに、と、自戒を込めて思った次第です。
(匿名かつ一方的なTBなので削除してもいいのですが、とりあえずそのままにしておきます。)

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2008.09.02

秋を迎えて

虫にもカレンダーがわかるのか、9月になったとたん、賑やかだった蝉の声も静まり、入れ替わって夜には秋の虫の声があちこちから聞こえるようになりました。

そんな秋を迎えて寂しいニュースが。
「北海道で最も長い歴史を持つ夜行列車「まりも」(札幌―釧路)が1日、最後の運行を終え、59年の歴史に幕を下ろした(朝日)」
かつては札幌を起点に函館・釧路・網走・稚内と各地への夜行急行網が充実しており、学生の頃、夜行列車を宿がわりにワイド周遊券を使って北海道を回ったことが懐かしく思い出されます。今回の廃止により、道内だけを運行する夜行列車はゼロとなったそうで、これも時代の流れで致し方ないところでしょうか。

一方、日本の中央では、福田康夫首相が突然の退陣表明。
定額減税なんていう話が出てきて、何なんだ、と思っていた矢先で、これも首相が政権を放り投げた理由の一つなのでしょう。某党が強く迫ったというこの定額減税、かつての地域振興券を思い起こします。

野次馬気分で政局を楽しむ分には面白くなってきたわけですが、景気はといえば
「財務省が1日発表した税収実績によると、7月の法人税収は1040億円の赤字(前年同月は1204億円の黒字)に転落した。景気低迷による業績悪化で、3月決算企業が昨年中に納めた法人税の還付額が膨らみ、税収を上回った。法人税収がマイナスとなるのは03年7月以来5年ぶり。景気の後退局面入りが、税収面からも裏付けられた。(読売)」
そうで、厳しい秋になりそうです。

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