相続税の今後
秋になりますと、そろそろ税制改正の動きが気になってきます。
消費税の税率アップが難しそうな状況の中、今回の注目点は、相続税の大改正がどうなるかというところでしょう。昨年の税調の提言から始まって、相続税増税へ向けての流れは出来ていたわけで、主税局は税理士会と何度も意見交換会を開いて実務レベルでの問題点も整理されつつあるようですし、噂ではすでに法案作成に着手という話も聞きますので、あとは、いつどのような形で新体系が姿を現すか待つばかり、といったところです。
財務省としては、消費税増税は今は難しそう、法人税を下げろと言う声もうるさくなってきた、さてどうしよう。そうだ相続税がある。人は必ず死ぬ、つまり相続というのは確実に発生する、しかも金融資産を多く持った高齢者は多い、となると、ここから税をいただくしかない。幸い理論的根拠はバッチリだし、弱者いじめでもないから国民的反発も受けにくい・・・という感じなのでしょう。ホームページ上で、今までいかに相続税の減税をしてきたか、以前は全死亡者の8%近くあった課税件数がいかに半減したか、などを盛んにアピールしています。
新しい計算方法や節税などテクニカルな話題はいずれ溢れてくると思いますが、大きく変わる部分として注目しておきたいのは、従来の「亡くなった方の遺産総額がいくらだったのか」という総額把握を前提とした仕組みから、「自分がもらった遺産の分だけ税金を納めてハイおしまい」という相続人各人が中心の仕組みへ、例えるなら家中心から個人中心へと、思想が転換するという点でしょう。
その転換により、遺産分割の場で繰り広げられる人間模様が今後どのように変わっていくのか、ひょっとしたらこの改正が、家というものを尊重してきた日本の文化の一つの終焉をもたらす引き金になるのではないか、そんな風にも思えてきます。