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2008.08.16

きららの仕事

最近、買って読む漫画は、ラズウェル細木、浦沢直樹、とみ新蔵くらいなのですが、今回紹介するこのシリーズ、表紙の握りの写真に惹かれて第1巻を手にして以来、最後まで読んでしまいました。

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江戸前鮨職人きららの仕事

才能ある女の子が苦難を乗り越え鮨職人として成長していく冒頭は、スシをテーマにしたグルメ漫画と「ガラスの仮面」的根性漫画の融合か、と思いきや、途中からトーナメント式激闘バトルマンガへと転換していく様は、まるで昔の「リングにかけろ」のようです。

強大な敵役である坂巻慶太という鮨職人が主人公のきららよりも魅力的で(彼を主人公にしたスピンオフ作品まで出ている)、他の登場人物も個性的。主人公の出生の秘密、彼女を鍛える老師匠、暖かく見守るいい人たち、秘密の特訓と必殺握り技の応酬、謎の助っ人、リアクション満開の審判員、技やネタの解説役の雑誌記者、対戦して打ち負かした相手が今度は主人公の味方となり、次の対戦相手はどんどんと強大化していく・・・

その少年ジャンプ的展開の心地よさの中にも、しっかりと鮨にまつわる蘊蓄が散りばめられ、大人が読んでも十分楽しめます。

いささか唐突な感じで終わった最終巻でしたが、さらに敵がパワーアップした第2部「きららの仕事ワールドバトル」も始まりました。今度は世界が相手。バーンと見開き1コマでの新必殺握り技の描写など、かつて「リングにかけろ」に熱中した世代の方はぜひご一読を。

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2008.08.12

ビッグサイトで鉄道模型を見る

一昨日、せっかくの日曜日なのでお台場まで足を延ばして、ビッグサイトで行われていた国際鉄道模型コンベンションを覗いてきました。ちなみに会場は先日エスカレーター事故があったあの建物です。

会場には、大人から子供まで、鉄道好き(の中の模型派)が大集合なのでしょうが、すばらしい展示作品揃いなので、マニアでなくても楽しめます。私のような年代になってくると、長大編成の新型電車が快走する作品よりも、作り込まれた懐かしい情景の中をSLが貨車を牽きながらのんびり走るこじんまりしたレイアウトに惹かれます。ある出展メーカーのコピーに「鉄道模型は癒しの世界」というような趣旨の言葉があったように思いますが、まさにその通り。

そんな会場の中、ある個人出展者のブースで人だかりを前にマイクで熱心に解説している白髪の男性に見覚えがあって、近寄ってよく見ると、雑誌などで顔写真をよくお見かけする元マイクロソフト社の古川享氏でした。あとでパンフレットを見てわかったのですが、氏は、このコンベンションを主催しているNPO法人日本鉄道模型の会の会長さんでもあったのですね。

鉄道模型というのは、本当は、余裕を持った大人の趣味なのかもしれません。

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2008.08.09

海軍乙事件

終戦の日が近づいたからというわけではないのですが、8月はどうしても戦争関連のものに手が伸びてしまいます。

ということで、吉村昭「海軍乙事件」です。文春文庫の新装版は字が大きくて確かに読みやすい。

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乙事件とは、太平洋戦争終盤の昭和19年春、パラオからフィリピン・ミンダナオ島のダバオへ向かっていた海軍の二式大型飛行艇(二式大艇)2機が、フィリピン到着直前に悪天候に阻まれ遭難、連合艦隊司令長官の古賀峯一大将が殉職、福留繁参謀長ほか数名がセブ島沖に不時着して、ゲリラに捕らえられ機密書類を奪われた事件をいいます。

「福留中将と山本中佐は、Z作戦計画書と暗号関係の図書類を入れた防水書類ケースを携行していた。むろん敵手におちるおそれがある場合には海中に投棄しなければならなかったが、カヌー上の現地人に不穏な気配は全く感じられず、ケースを海中に沈めることはしなかった。」

しかし実際は、その書類はゲリラから米潜水艦の手を経てオーストラリアの陸軍情報部へ届けられ徹夜の翻訳作業ののち海軍情報部へ送られました。これにより日本軍の手の内は連合国側の知るところとなります。さらに彼らは、それらの書類を入手しなかったかのような偽装まで行います。

一方わが国の海軍上層部の対応は、書類の紛失よりも、福留中将たちが「捕虜となったか否か」ばかりに終始し、防諜という視点を全く欠いていたのでした・・・

本書には、乙事件と対をなす「海軍甲事件」という短編も収録されています。甲事件とは、乙事件の約一年前、古賀長官の前任の連合艦隊司令長官である山本五十六大将が、ソロモン群島において航空機で視察中に米軍機の待ち伏せを受けて撃墜された事件です。

本作では山本長官の護衛に付いた6機の戦闘機のパイロットの一人(柳谷飛行兵長)の視点から事件が描かれます。この長官機撃墜に関して、例えば著名な戦史通は対談で

「半藤:このとき護衛機のゼロ戦は六機ともみんな無事だったんですが、なぜ護りきれなかったのかと後で批判されます。」
「保阪:それで、生き残った人は制裁として最前線に送られて次々に戦死してしまいます。」
<文春新書「昭和の名将と愚将」(半藤一利+保阪正康)>

と一言で片付けられていますが、吉村昭は綿密な取材を元に彼らのその後に目を配ります。

「柳谷たちに対して、責任問題は起こらなかった。六機の護衛機で十六機の敵機の攻撃をふせぐことは事実上不可能であった。
そうした事情を理解していた上司たちはかれらの責任を問うことはなく、一般の隊員たちも柳谷たちの不運に同情することはあっても非難する者はいなかった。」

海軍が気にしたのは、護衛の責任問題ではなく山本長官死亡という情報の秘匿の方でした。そのあたりの事情は、生存者である柳谷氏への取材記録として、同じく文春文庫の「戦史の証言者たち」に詳しく載っています。

暗号が解読されていることなど露知らない東京の大本営の偉い方々は「なぜ護りきれなかったのか」と憤ったのでしょうが、事情がわかる現場では当事者たちへの気遣いや労りがあったのでしょう。

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2008.08.07

ストリートビューと財産評価

グーグルがが提供しているサービスに「Googleマップ」という地図サービスがありますが、ここに「ストリートビュー」という新しい機能が加わりました。街角で繰り広げられるさまざまな人間模様まで写り込んでいて、プライバシー問題にまで発展しかねない、という報道もありますが、それはここでは触れません。

この機能、我々の業務上の使い道として重宝しそうなのが、資産税がらみの仕事です。例えば相続税や贈与税の財産評価にあたって、評価対象が不動産の場合、図面などのチェックと同時に、現地を訪れて実際の状況を目で確認する、というのが一般的なのですが、その予備調査のツールとして、「ストリートビュー」機能は結構使えます。また、現地を確認するまでもない簡単な税務相談などの場合、お客さんと一緒に画面を見ながら宅地の利用状況のヒアリングをするという使い方も広まりそうです。

それ以外にも、不動産売買や賃貸契約の取引に際して、物件の状況や近隣の雰囲気を知る上でもかなり役立ちそうで、不動産屋さんのカウンターでは、PC上で「ストリートビュー」を開きながら物件の机上説明を受ける、という光景がこれからは一般的になっていくかもしれません。

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2008.08.01

非上場株の価格算定指針など

8月になりまして、暑い日がまだまだ続くなあ、とうんざりする一方、今年ももうあと5ヶ月か、と時の流れの速さに感じ入ってみたりしながら、7月の気になった新聞記事を読み返してみました。

7月17日の日経夕刊には、「中小企業庁が年内にも非上場株の価格算定指針を作る」という記事が。将来的には、国税庁の財産評価基本通達への反映も目指すとのことですが、M&Aなどの取引目的と国家の徴税目的では考え方も異なるでしょうから、どのような形に取り纏めるのか興味あるところです。このあたりの動きはウォッチしなくてはなりません。

同じ日の朝刊には、わが国の高い法人税率のせいで日本企業の海外利益が国内に還流せず税の空洞化が進んでしまう、という記事。このへんの報道が、秋に税制改正案として具体化してくるのでしょう。

7月19日は、旧長銀の粉飾決算事件の最高裁判決の記事。こちらは会計基準がらみのお話しですね。

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