夏の椿
正月休みのように纏まった時間が取れるときこそ、積ん読状態だった本をまとめ読みする貴重な機会です。今回も何冊か読むことが出来たのですが、その中で、これは良かったという作品がありましたので、ご紹介。
時代小説の秀作です。
以前どこかの書評で薦められていたのを見て、これは読もう、という直感が働きすぐ買ったものの、ずっと手つかずになっていたのですが、正月はやはり時代小説でしょう、ということで布団に潜って読み始めたのでした。
江戸時代は天明のころ、元鳥越の彦十店という長屋に住む立原周乃介という侍を主人公とする、巻き込まれ型私立探偵系人情派ハードボイルド時代ミステリとでもいうのでしょうか。とにかく、読み終わって、「ああ、いい小説を読んだなあ」という充実感が湧き上がる秀作です。主人公が殺された甥の死の謎を追うストーリーも良くできていて、つい頁をめくる指も早くなりがちですが、そこをぐっと押さえて、じっくりと叙情に満ちた小説世界を味わうという読み方がオススメです。こういう小説が読めるところが、日本人で良かったなあと実感する瞬間ですね。