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2007.12.01

ドラキュラ

「ドラキュラの『子孫』が死去」というニュースが先日ありました。

<アイルランドの作家ブラム・ストーカーが描いた吸血鬼ドラキュラのモデルとされるブラド公の「子孫」、オトマル・ロドルフェ・ブラド・ドラキュラ・プリンツ・クレツレスコ氏が17日、ドイツ東部の町で死去した。67歳だった。(11月22日 朝日)>

子孫といっても実際に吸血鬼の家系だったわけではなく、ストーカーが「ドラキュラ」創作時に、東ヨーロッパに実在した豪族の史料を参考にした、という関係にすぎないのですが、この怪奇小説の古典はオススメで、去年久しぶりに再読しました。

この名作、70年代に平井呈一氏による全訳版が創元推理文庫から出ており、私も高校3年の夏休みに夢中になって読んだ記憶があります。はじめはそのボリュームに読み切れるか不安でしたが、読み出すと止まりませんでした。
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今回再読に及んだのは、注釈付の新訳・完訳版があることを知ったためです。海外怪奇小説の翻訳家として名高い平井呈一氏の訳は雰囲気満点でしたが、今読み返すと文体も古く、文庫版ゆえ文字も小さくて読みにくい。完訳版はハードカバーで地図や19世紀の文化に関する詳しい注釈入り、読みやすさではこちらが優っています。(ちょっと値が張るのが難点か)

個人的には東ヨーロッパを舞台にした冒頭の4章が気に入っています。特にトランシルヴァニア山中のボルゴ峠で主人公が伯爵の迎えの馬車に乗り換えるシーン。ここまで送ってきた乗合馬車の乗客達が不吉な詩の一節を囁くところなどゾクゾクします。

(旧訳)「死びとは旅が早いもの」
(新訳)「なんとなれば、死者は速やかに旅をする」
(原文)"For the dead travel fast."

このあたりは平井訳が雰囲気を出しているところでしょう。映画では米ユニバーサル社1931年製作の「魔人ドラキュラ」(監督トッド・ブラウニング 主演ベラ・ルゴシ)の冒頭部分も雰囲気満点です。

ストーリーはよく知られた通りで、ホラーとしてはそれほど恐いものではありませんが、久々に物語を読む醍醐味を味わうことが出来ました。現代のサスペンス物のように一気呵成に読むのではなく、冬の夜長、葡萄酒(ワインではなく)を片手に19世紀の怪異譚をゆっくりと味わう、という読み方がオススメです。

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