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2007.09.21

ヴァンパイヤー戦争

070921
夏の休暇の前、さて何を読もうかと書店でいろいろ物色中に、文庫の棚でタイトルが目にとまり、手に取った一冊がこれ、講談社文庫の笠井潔「ヴァンパイヤー戦争」です。

80年代の伝奇アクション全盛時の作品で、その当時に読む機会はなかったのですが、カドカワノベルス版の生頼範義氏による表紙イラストが印象に残っていて、タイトルはよく知っていました。

当時読み損なっていたという思いもあり、ではこれを、と手にとってびっくり。表紙のイラストがイメージとかけ離れているではありませんか。迷ったものの、小難しい専門書の合間に軽い小説も読もうと考えていたので、とりあえず第1巻をレジへ。

さて、いざ読み出して困ってしまいました。なかなか先を読む気がわいてこないのです。ジャンルでいえばSF伝奇アクション、大藪春彦と平井和正と半村良を足して三で割ったような娯楽作品で、2時間もあれば読める分量なのですが、なぜか物語世界に入っていけません。

しかし、せっかく読み始めたのだから、と何とか放り出さずにようやく最近第1巻を読み終えて、これはもしかして自分の感受性が低下してしまったのかと心配になり、ちょっと理由を考えてみました。そしてわかったことは・・・

1.キャラクターに魅力がない。ストーリーは壮大でアイデアには読者を引っ張る力はあります。ただ、小説としては、単にあらすじに沿って人物が動いているだけにしか感じられず、読み続けるのが辛い。

2.ミスマッチの表紙からくる違和感。どうしても生頼範義氏のイメージがあるので、私の世代の読者にとっては、このライトノベル風の表紙(人物紹介の口絵イラストまである!)は勘弁して欲しいところ。

3.同ジャンルでの名作を既に読んでしまっていた。70年代に、SFハードボイルドの先駆けとしての平井和正の諸作に熱中した世代からすれば、特に(他の新書や文庫版ではなく「祥伝社ノンノベル版」の)ウルフガイと呼ばれる平井和正の作品群があまりに強烈だったので、その後、似たような小説では何を読んでもその時の興奮を超えることができない。

笠井潔の探偵小説の評論は結構読んでいたのですが、小説は初めてで、今回は私にとってはハズレを引いてしまったようです。

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