終戦の日に
終戦の日が近づくと、書店では近代史や戦争もののコーナーが設けられ、テレビは戦争関連の特集番組ばかり、と思って今日の番組表を見たら、終戦の日がらみではNHKがちょこっと番組をやるだけで、民放はふだんどおりのバラエティやドラマのオンパレード。そんな戦争の記憶が薄れつつある今日この時代を、当時の若者がもし見たら、いったい何を思うか・・・
そんな感慨に耽ってしまう1冊が、三島由紀夫の「英霊の聲」です。神道の儀式により降りてきた二・二六事件の青年将校と神風特攻隊員の霊がその想いを語るという短編ですが、異様な迫力がある作品です。
その迫力をもたらす要因かどうかわかりませんか、この短編にまつわる裏話を、三島由紀夫と親交があった美輪明宏氏が、瀬戸内寂聴さんと対談した「ぴんぽんぱん ふたり話」の中で語っています。
それによりますと、美輪氏曰く、この作品は、二・二六事件の反乱軍の将校のうちある特定の一人の霊が実際に三島に取り憑いて書かせたもので、三島自身が「自分の表現でも言葉でも書体でもないから書き直そうとしても、絶対書き直せないある力が働いた」と語ったとのこと。興味ある人は、同書をご参照ください。