必修科目履修漏れとレジェンド問題
突然世間を騒がせている高校の履修偽装問題、ではなく未履修問題。各紙の表現を見ると、必修科目の履修漏れ問題(朝日・日経)、必修逃れ(読売)、履修単位不足問題(毎日)、未履修問題(産経)など、まだマチマチのようです。
自分の高校時代を振り返ると、社会科で言えば、地理・世界史・日本史・倫理社会・政治経済と全員がきちんと履修していました。それが当然だったし、入試に関係なくとも学んだことは無駄ではなかったと思っていますので、当時より大学入試が易しくなっていると聞いている現在、学ぶべき時期に学ばせなかったという意味で、学校側の責任は大きいでしょう。(履修せずに卒業していった生徒達が立派な社会人としてわが国を支えていっているという現実があるのなら、そもそも学習指導要領など全く無意味だよね、とも言えるわけですが)
この問題に対し、政府は「救済措置も検討」とのことですが、安易に救済をしていいものかどうか。2点ほど気になったことがあります。
一つは、少し前に加算税の取り扱いに対する最高裁の判決が出た「ストックオプション裁判」。
ストックオプションで得た利益を税務署の指導に従って一時所得として申告した納税者に対し、課税庁が突如見解を変更して、給与所得に当たるとして過去に遡って追徴課税した問題ですが、その際に「給与所得として申告し納税した者との間に著しい不公平を生ずることになり、かえって正義に反する事態が生ずるといわざるを得ない」というのが裁判所の言い分でした。これに倣えば今回の問題も、「卒業前の生徒はもちろん、過去に単位不足のまま卒業した生徒にも遡及して不足単位を履修させなければ、きちんと履修した生徒との間に著しい不公平を生ずることになり、正義に反する事態が生ずるといわざるを得ない」となりますね。
もう一つは、日本の会計基準が国際的に通用しないことを明らかにせざるを得なかった「レジェンド問題」。
これにより日本の会計基準による財務諸表の信頼性が失われたわけですが、今回の履修漏れ問題を生徒の救済を優先して安易に決着させちゃうと、日本の高校卒業資格の国際的な信頼性が将来にわたって失われてしまうのではないか、という危惧が生じます。留学希望者が外国の学校に卒業証明書などを提示する際に、「なおこの履修証明は国際的に通用する基準とは異なる」という警句(レジェンド)を付さなければならなくなったりして。
とはいえ、議員やタレントなど著名人の学歴詐称なども深く追求する国柄ですから、きっときちんとした対応がなされることでありましょう。
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