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2006.10.28

必修科目履修漏れとレジェンド問題

突然世間を騒がせている高校の履修偽装問題、ではなく未履修問題。各紙の表現を見ると、必修科目の履修漏れ問題(朝日・日経)、必修逃れ(読売)、履修単位不足問題(毎日)、未履修問題(産経)など、まだマチマチのようです。

自分の高校時代を振り返ると、社会科で言えば、地理・世界史・日本史・倫理社会・政治経済と全員がきちんと履修していました。それが当然だったし、入試に関係なくとも学んだことは無駄ではなかったと思っていますので、当時より大学入試が易しくなっていると聞いている現在、学ぶべき時期に学ばせなかったという意味で、学校側の責任は大きいでしょう。(履修せずに卒業していった生徒達が立派な社会人としてわが国を支えていっているという現実があるのなら、そもそも学習指導要領など全く無意味だよね、とも言えるわけですが)

この問題に対し、政府は「救済措置も検討」とのことですが、安易に救済をしていいものかどうか。2点ほど気になったことがあります。

一つは、少し前に加算税の取り扱いに対する最高裁の判決が出た「ストックオプション裁判」。

ストックオプションで得た利益を税務署の指導に従って一時所得として申告した納税者に対し、課税庁が突如見解を変更して、給与所得に当たるとして過去に遡って追徴課税した問題ですが、その際に「給与所得として申告し納税した者との間に著しい不公平を生ずることになり、かえって正義に反する事態が生ずるといわざるを得ない」というのが裁判所の言い分でした。これに倣えば今回の問題も、「卒業前の生徒はもちろん、過去に単位不足のまま卒業した生徒にも遡及して不足単位を履修させなければ、きちんと履修した生徒との間に著しい不公平を生ずることになり、正義に反する事態が生ずるといわざるを得ない」となりますね。

もう一つは、日本の会計基準が国際的に通用しないことを明らかにせざるを得なかった「レジェンド問題」。

これにより日本の会計基準による財務諸表の信頼性が失われたわけですが、今回の履修漏れ問題を生徒の救済を優先して安易に決着させちゃうと、日本の高校卒業資格の国際的な信頼性が将来にわたって失われてしまうのではないか、という危惧が生じます。留学希望者が外国の学校に卒業証明書などを提示する際に、「なおこの履修証明は国際的に通用する基準とは異なる」という警句(レジェンド)を付さなければならなくなったりして。

とはいえ、議員やタレントなど著名人の学歴詐称なども深く追求する国柄ですから、きっときちんとした対応がなされることでありましょう。

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2006.10.26

数字に強いとは?

最近の会計本からもう1冊。
著者は過去に「実学入門 経営がみえる会計」などの好著を連発している公認会計士。帯の文句は「本当に数字に強いとはこういうことだ! 一目でわかる直感力の鍛え方」

最近の出版ですが、タイトルは奇を衒わずにオーソドックス、文体が軽い口語調なのは、やはり最近の風潮に合わせたのでしょうか。ただし口語調といっても、黄色い表紙のベストセラー本のような下品さはなく読みやすいので、ご安心を。

決算書を作るのはプロや経理マンに任せ、ビジネスマンはまず決算書を「読んで」「活かす」能力を身につけよう、というスタンスの会計の入門書。シンプルな図解を使いながら、財務(ファイナンス)と会計(アカウンティング)と財務会計(アカウンティングの一分野)の違いなど、日常何げなく使っている言葉の意味にまで立ち返って、会計の全体像をわかりやすく解説してくれます。

会計を勉強する前に全体像を把握したい人にもオススメの良書。

061026
数字は見るな! 簿記があなたの会計力をダメにする

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2006.10.20

餃子屋と高級フレンチ

書店で新しい会計本を見かけたので、つい手に取ってしまいました。

タイトルからすれば、これも「さおだけ屋系」の一つと言えるでしょう。内容は良心的。帯には「ビジネスパーソンのための管理会計入門」とあります。

業績が悪化したアパレル会社を亡き父から引き継いだ女の子が、ワイン好きなコンサルタントとさまざまな店で会食しながら、キャッシュフロー、限界利益、原価管理など経営者としての意思決定に必要な会計知識を身につけ社長として会社を建て直すという、ストーリー仕立ての構成で、章ごとに飲食ネタから管理会計へ強引に話題を展開していく繰り返しですが、経営のための会計という視点が貫かれていて、一気に読めます。

「4ドアベンツ」のような駄本を読んで腹を立てた人にはオススメです。ただし財務会計の解説本ではなく、また節税などの話も出てこないので、その点は注意。

061020
餃子屋と高級フレンチでは、どちらが儲かるか?

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2006.10.13

「e-Taxを普及させよ」

外務省が、利用者がほとんどいない「旅券電子申請システム」の停止を決めました。財務省の予算執行調査で「本システムの継続に合理性なし、廃止を含めた見直しを早急に検討すべき」と指摘されたのがきっかけのようです。

その財務省のお膝元である国税庁は、「電子申告(e-Tax)」の普及に躍起となっています。普及率は増えて来てはいるものの、当初の想定にはほど遠く、現状の使い勝手のまま普及させるには税理士の協力が不可欠とみたのか、国税局は各地の税理士会に、税務署は所轄地域の税理士会の支部にと、各レベルに応じた「e-Taxを普及させよ」との働きかけが始まっています。国税局は税務署間でe-Tax普及率を競わせているはずですので、最前線に位置する署の担当者は、ノルマ達成のため税理士会だけでなく法人会、青色申告会などへの協力要請で大忙しでしょう。

さて、個人の確定申告の時期ではありませんが、たまたま国税を納付する必要が生じたため、久しぶりに電子納税でも行って東京国税局のe-Tax利用率向上に協力しようと思ったのですが、ちょうど某銀行の前を通りかかった際に、ついフラフラと窓口で納税手続きを行ってしまいました。

所要時間は3分ほど。

東京に住んでいる私のような個人に限って言えば、金融機関での窓口納付の方が(空いていれば)圧倒的に早くて便利です。(余談ですが、一つの店舗に合併前の2つの支店が同居している某メガバンクのその奇妙な支店のカウンター内から若い女の子の行員が姿を消しているのにびっくり)

ただし、窓口が開いている時間内に金融機関へ行くことができない納税者も大勢いるはずですので、電子納税のニーズはかなりあるはず。国税サイドも、まず電子納税をきっかけにe-Taxを普及させる作戦を取ることが効果的と思うのですが。

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