ベンツは4ドアでなければ神話
居酒屋で焼魚定食を食べながら置いてあった日経MJを読んでいたら、ベストセラー本として「なぜ、社長のベンツは4ドアなのか?」が取り上げられていました。相当売れているようです。
タイトルからして、ベストセラー「さおだけ屋はなぜ潰れないのか?」のあやかり本に違いないと思いつつ、実は私もそのタイトルに釣られて出版直後の6月に読んでいましたので、ちょっと感想を。
Amazonの評価をみても賛否両論あるようですが、ひと言で言って、極めて読みにくい本です。取り上げているネタはそれなりに面白いのですが、まとめれば20~30ページに収まるであろう内容を、冗長な口語体で200ページ近くに水増しし、結果として言いたいことが伝わりにくくなっています。
かんじんの「なぜ社長のベンツは4ドアなのか」という問いにも明確な回答を出していません。膝を打つような意外な真実でも提示されるのかと期待して読み進んだのですが、完全な肩すかし。これほどタイトルと内容とが乖離している本もめずらしいのではないでしょうか。
たぶん、2ドアやRVはレジャー要素が強く税務署に目をつけられやすいからお仕事用として経費にしたければ4ドアセダンにしなさい、と言いたいのだと思いますが、それはあくまでも「お話」の世界。現実にはドアの枚数だけで判断されるわけではないのは実務に携わっている方ならご存じの通りです。「ベンツは4ドアでなければ神話」が広まることについて、税務署の調査官などは「これで調査がやりやすくなる、2ドアの社用車を否認しやすくなるぞ」と歓迎しているかもしれませんね。
<参考:「どんなに高額な輸入車でも100%業務に必要で100%業務使用なら経費になる。反対にボロボロの中古車でも利用実態が社長の私用のみならダメ」という趣旨の国税局の見解が某専門紙に載っていました>
なお、サブタイルに裏会計学とありますが、内容は会計学とはほとんど関係ありません。節税とか資金繰りの中小企業向けtipsをわかりにくく口述しただけです。(このサブタイトルもベストセラー「裏帳簿のススメ」のもじりか?) 内容的には、比べたら失礼なほど、本家である「さおだけ屋~」の方が圧倒的に質が高い。真面目に会計の勉強をしようとしている人は、帯のコピーに釣られないように。読むべき本は他にいっぱいあるはず。
結論。
二匹目のドジョウとしては大成功。やはりタイトルが秀逸。しかしこの内容、読みにくさは編集者・出版社側にも責任があるのでは? そもそもビジネス書の棚に並ぶのは間違い。エッセイとかノンフィクションの棚に置くべきでしょう。書店で買うなら「さおだけ屋~」。「4ドアベンツ」はブックオフに大量に並ぶはずなので、どうしても読みたいのなら立ち読みあるいは読み終わった人から借りて、もしくはブックオフで半額にて。(注:「4ドアベンツ」初版本には減価償却の月割計算について誤った記述があるので読むなら二刷以降です)