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2006.07.24

同族会社増税に対し東商が要望書

当ブログでも「サラリーマン法人潰し」として取り上げてきた同族会社への増税。ターゲットとなってしまった同族会社の皆さんも、ようやく課税強化を実感しはじめたようですが、先週送られてきた東商新聞を見ていたら、
「東京商工会議所は『特殊支配同族会社の役員給与の損金算入制限措置に関する要望』を決議」
という記事を発見しました。

要望書には
「本措置が及ぼす既存の同族会社への影響の大きさ、あるいは本来の政策意図と実際の影響との食い違い、さらには税体系全体との整合性など、いくつもの問題点が明らかになった。」
とあります。

問題点は当初からわかっていたのですから、「今ごろ遅すぎ!」という思いもありますが、やはり実際に増税額を試算した結果を、各経営者達がやっと実感として把握できてきた、ということなのでしょう。(問題点の一番目に「影響の大きさ」が指摘されています)

要望書全文は東商のサイトで読めますが、要点が6つにまとめられているので、要旨を簡単に紹介します。

060724

1.影響の大きさ

(1) 財務省発表数字よりも大きい可能性
財務省の発表によると本措置は300億円の増税で5~6万社が対象になるとの説明だが、東京税理士会の調査結果や当所23支部と当所税制委員会との懇談会における中小企業経営者自身からの意見、あるいは当所が実施した会員企業への聞き取り調査の結果などは、いずれも財務省の発表数字よりも影響が大きくなる可能性を示唆している。

(2) 既存の一般企業への影響が大きい
特に当所で実施した会員企業への聞き取り調査の結果を見ると、従業員規模、業歴とも十分に備えた一般の企業が本措置の対象となる事例を容易に見つけることができる。「個人事業者として設立すべきところ法人成りにより二重控除を受けようとする節税行為を防ぐ」という本措置の対象は、このような企業ではなかったはずである。


<ちょっとコメント>

※1 昨年12月に財務官僚から説明を受けた議員の言葉として「タレントみのもんた氏や大リーガー松井秀喜選手を例に、手当ての必要性を口頭でレクチャーされた」と聞き及んでいます。フタを開けてみたら身近な中小企業にこれほど影響があるとは、議員たちも想定していなかったのではないでしょうか。(ちょっとだまし討ち的なレクチャーですね)

※2 一方で「今回の改正は、将来の消費税増税への布石」という見方もあるようです。すなわち、税制の抜け道として国民が不公平感をもっている部分を塞いで、「さあ、法人成りで節税メリットを享受しているような方々への対策はとりました。これで皆さんの不公平感は解消されましたね? では、残るは消費税の税率アップしかありませんよね!」と国民を納得させるステップの一つというものです。

2.経営上のリスクの増大

(1) 本措置への対策は経営上のリスクになり得る
本措置の対象から外れる対策を個別企業が講じることは比較的容易なので本措置は問題視するに及ばずと政策当局は説明している。しかし単に税務対策の観点からこのような対策を講じることは経営上のリスクを新たに抱えることにもなりかねない。

(2) 株主・役員構成、役員給与額の決定に税制が関与すべきではない
株主構成、役員構成、役員給与の額は、いずれも経営上の観点から決定されるべき事項であり、節税対策のため拙速に変更することは同族経営の強みを損なうだけでなく、経営上のリスクを増大させかねない。そもそもこのような事項の決定に税制が関与すべきではない。

3.税法上の問題

(1) 税法制論上の問題
本措置において、給与所得控除という個人所得税の概念を法人税に持ち込んだ点は、法人税・所得税の法体系を歪めることになり、税法制論上、問題である。

(2) 給与所得控除の問題
政府税調では「個人所得課税に関する論点整理」(平成17年6月)において給与所得控除の見直しが今後の課題と指摘しているにもかかわらず、このような概念を本措置に用いていることは問題である。

4.会社法の理念との矛盾

(1) 創業支援という理念と矛盾
会社法の創業支援という理念と本措置は矛盾している。

(2) 定款自治という理念とも矛盾
本措置は、会社規模や成長段階に応じて、定款で定めることにより、会社組織や運営方法を比較的自由に選択できるという、経営の自由度を高める会社法の理念とも矛盾している。

5.手続きの問題

(1) 十分な事前の議論が必要
本措置の内容を吟味する時間は必ずしも十分ではなかった。

(2) 納税者の納得性が必要
特定の納税者に対して新たな負担増を伴う新制度を導入するのであれば、十分な議論や納税者への説明が必要である。今回のような手続きでは、本措置の導入に対する納税者の納得性は低く、現行の税制改正の決定システムに対する不信感を招く。

6.公平性の問題

わが国の中小企業の圧倒的多数が同族会社であるという現実と考えあわせると、法人経費の適正化を強調するあまり過度な規制を施すことは「角を矯めて牛を殺す」結果となりかねない。同族会社が雇用や地域に対して多大な貢献をしている事実に対してもっと目が向けられるべきである。

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