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2006.04.07

電子申告の弱点(前編)

もう先月の話となってしまいましたが・・・確定申告期が終わるのを待っていたかのように、マスコミは電子申告が普及しない実態を取り上げました。

たとえば日経は3月18日の社説で「国税の電子申告・納税システム「e-TAX」の普及が遅れている。利用を促す抜本策が必要だ」として、普及しない理由を次のように述べています。

・宣伝不足
・電子証明書・専用ソフトが必要など、使い勝手の悪さ
・さらにICカードリーダーが必要(有償で納税者が用意)
・税理士にも問題がある(?)
・有力銀行の企業向けパソコン取引システムが電子納税に対応していない
・添付書類の別途郵送が必要

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どれももっともな理由ですが、(?)を付けた一つだけは、日経の事実誤認と思われます。

社説には、「電子申告には納税者と税理士の両方が事前登録する必要があるが、全国に約69,000人いる税理士のうち、四分の一の約18,000人しか届けを出していない(のが問題である)」とありますが、税理士が関与しない納税者は、当然ながら本人の事前登録だけでOKです。また届けを出した税理士が約18,000人しかいないとのことですが、これは税理士本人が自分の確定申告を電子申告により行うことを選択した人数のはずです。

日本税理士会連合会が17年12月15日付で内閣官房IT担当室に出した要望書によると、「日税連電子認証局は既に40,000枚以上の電子証明書を会員に発行済み」とありますから、実際には、6割近い税理士が納税者から電子申告の要望があった場合に対応する用意はできているわけです。

つまり、「多くの税理士は、税の専門家として、納税者の依頼があれば電子申告に対応可能だが、実務家として現状の電子申告システムにメリットがあると受け止めてはいないので、こと自分自身の申告については(納税者の立場として)電子申告の選択はしていない」というのが、正しい数字の読み取り方ではないでしょうか。

政府の側も、当然ながら現状がうまくないことは認識しているわけで、3月31日に「オンライン利用促進のための行動計画」についてというプランが公表されました。全196ページですが、電子申告・納税に関しては99ページ目に掲載されています。(つづく)

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