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2006.04.15

電子申告の弱点(後編)

前回のつづきです。
3月下旬のある日、個人事業者として消費税の納税をしようと納付書を取り出しました。消費税申告書の方は、3月15日までに所得税の確定申告書と一緒に提出済みでしたので、あとは納税手続きのみです。(個人の消費税の申告と納税の期限は3月31日)

そこでふと思い出したのが、電子申告・納税システム「e-TAX」のことです。電子証明書は持っているし届出も出してあるし、何よりも電子納税は以前に実際に行ったことがあるので、久々に試してみようと思いました。

まずPCにインストールしてある「e-TAX」ソフトをオンラインでバージョンアップ。ちょっと垢抜けないデザインのソフトを立ちあげ、基本的な流れを再確認(ここで時間がとられる)します。次いで、以前利用したときにメモした手順書を探し出して、暗証番号と納税用確認番号を確認。

あとは、電子証明書とICカードリーダライタをセットし、という段になり、肝心のそれらが見あたりません。証明書は重要なものなのでどこかに仕舞い込んであるはず。リーダライタは、パソコン周辺機器を入れたいくつかある段ボール箱のどこかに入っているはず。どちらも時間をかければ見つかることはわかっているのですが、いったいどこに・・・そんなことをしているうちに三十分以上経過。電話がかかかってきたり来客があったりで、そのうち探すのが面倒になってしまいました。

結局次の日、外出するついでに銀行の窓口で納付することに方針を変更しました。合併で長ったらしい名前になった某都銀は、月末近くにもかかわらず幸い空いていて、あっという間に納付完了。支店のドアを入ってから出るまで、時間にして4分ほど。電車1本遅らせるだけの手間で納税手続き完了です。

結局「e-TAX」は、便利なのは確かで今後普及していくことは間違いないでしょうが、手順が面倒なので、頻繁に利用して手順を飲み込んでいる人以外は、かえって時間をとられてしまうような気がします。ここはやはり、電子申告利用者税額控除といった金銭的インセンティブを設けて欲しいところですね。

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2006.04.11

電子申告の弱点(中編)

前回のつづきです。
では実際の電子申告の使い勝手はどうなのか? ということで、以前自分でトライした結果を記録した文章があったので、再掲してみましょう。ちなみに平成16年秋の話ですので、念のため。

060411

1.結構めんどう

自分自身がまず実験台として署に申請、e-taxソフトを入手しました。「申告」の時期ではないので、「納税」手続きにトライ。申告所得税の予定納税を電子納税でおこなってみました。無事できた(と思う)のですが、結構めんどくさい。ネックになるのは、
 ・いろいろな登録番号やパスワードがごちゃごちゃになる
 ・電子署名の部分が目に見えないので最初は戸惑う
というあたり。
 
毎月のように行って慣れれば多分どうという事はないのでしょうが、一般納税者が年1回やるだけとなると、結構しんどい(確定申告書等作成コーナーを利用した方がだんぜん早くて楽)と思います。

2.申告より納税の方が需要あるのでは

会計事務所に依頼している納税者の側に立てば、電子申告のメリットは「いまのところ全くない」と私は思います。むしろ「納税」の方が納税者にとって利便性があるはず。実際、すぐに何件かの顧問先から「オンライン納税したい」という要望がありました。特に源泉税など毎月発生するものについて、いちいち金融機関の窓口に行ってられない、という潜在需要が結構あると思います。
 
3.住基カードの勘違い

そこで、顧問先に電子納税の方法をレクチャーしよう、と、まず自分で公的個人認証を取得し、トライしてみました。ところが、区役所で取得したICカードを使っても、ソフトが反応しない。おかしいなあ、と思ってサイトで調べると、「区役所から交付されたソフト云々・・・」とか書いてあります。でも私が交付されたのはカードだけ。確認のため区役所の戸籍課へTELしてわかったこと。
・住基カードと公的個人認証は別物 ・公的個人認証サービスとは、住基カードを持っている人に対して電子証明書を発行するサービスのこと
・つまり申請にあたっては
 1.住基カードの交付を受ける
 2.同時にそのカードのチップにに電子証明書を格納してもらう
  という二段階の手続きが必要
私はこの両者を混同してました。結局、私は空っぽのカードをリーダライターにセットしていたわけですね。

「そんなこと、どこに書いてあるの?」と区役所に言ったら、
「申請時に窓口で、電子証明書は使いますか、と確認しているのですが・・・」
とのこと。どうやら申請だけ近所の出張所で行ったので、出張所レベルではそのあたりの対応が徹底していなかったようです。(このへんは区によって対応が異なるかもしれません)

4.銀行が法人顧客に対応していない?

電子納税にあたっては、銀行とインターネットバンキングの契約が必要です。個人の場合、Pay-easy(ペイジー)という公共料金払込システムに対応しているのでOKなのですが、法人契約の場合、まだダメなのですね。
 
例えば、顧問先がみずほ銀行に問い合わせたところ「対応していない」と言われたそうで、せっかく電子納税をやる気になっていたその会社は、相変わらず窓口で納税をしています。(つづく)

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2006.04.07

電子申告の弱点(前編)

もう先月の話となってしまいましたが・・・確定申告期が終わるのを待っていたかのように、マスコミは電子申告が普及しない実態を取り上げました。

たとえば日経は3月18日の社説で「国税の電子申告・納税システム「e-TAX」の普及が遅れている。利用を促す抜本策が必要だ」として、普及しない理由を次のように述べています。

・宣伝不足
・電子証明書・専用ソフトが必要など、使い勝手の悪さ
・さらにICカードリーダーが必要(有償で納税者が用意)
・税理士にも問題がある(?)
・有力銀行の企業向けパソコン取引システムが電子納税に対応していない
・添付書類の別途郵送が必要

060407

どれももっともな理由ですが、(?)を付けた一つだけは、日経の事実誤認と思われます。

社説には、「電子申告には納税者と税理士の両方が事前登録する必要があるが、全国に約69,000人いる税理士のうち、四分の一の約18,000人しか届けを出していない(のが問題である)」とありますが、税理士が関与しない納税者は、当然ながら本人の事前登録だけでOKです。また届けを出した税理士が約18,000人しかいないとのことですが、これは税理士本人が自分の確定申告を電子申告により行うことを選択した人数のはずです。

日本税理士会連合会が17年12月15日付で内閣官房IT担当室に出した要望書によると、「日税連電子認証局は既に40,000枚以上の電子証明書を会員に発行済み」とありますから、実際には、6割近い税理士が納税者から電子申告の要望があった場合に対応する用意はできているわけです。

つまり、「多くの税理士は、税の専門家として、納税者の依頼があれば電子申告に対応可能だが、実務家として現状の電子申告システムにメリットがあると受け止めてはいないので、こと自分自身の申告については(納税者の立場として)電子申告の選択はしていない」というのが、正しい数字の読み取り方ではないでしょうか。

政府の側も、当然ながら現状がうまくないことは認識しているわけで、3月31日に「オンライン利用促進のための行動計画」についてというプランが公表されました。全196ページですが、電子申告・納税に関しては99ページ目に掲載されています。(つづく)

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2006.04.04

モバイルSuicaの弱点(後編)

前々回、モバイルSuicaが快適だという話を書きましたが、そのつづきを。

このサービスの弱点は、ケータイのバッテリー残量ではないでしょうか。もちろん、本人名義のビューカードを持っていないとサービスを利用できないというのも、(弱点ではなく)大きな欠点でしょうが、使い勝手の面でいいますと、私のようにすぐにバッテリー切れをおこしちゃう人は要注意です。

おおむね快適に利用できているのですが、入場できないトラブルが2つありました。

一つは、バッテリー残量が充電が必要なレベルまで落ちているときに、自動改札を通過できませんでした。モバイルSuicaはバッテリーが減ってても大丈夫という話をどこかで読んだので、おかしいなと思いつつ改札機を変えて3ヶ所で試したのですが、いずれも「係員のいる窓口へ」という表示が改札機に出て扉が閉まってしまいます。しつこく試すのも他の乗降客の迷惑になるので、仕方なく中年の駅員に事情を話すと、モバイルSuicaのことはよくわからない様子でめんどくさそうな対応。あきらめて従来のSuicaカードをかざして入場しました。

もう一つは、改札機の表示に「出場記録無し」と出て扉が閉まってしまうというもの(フル充電時)。仕方なく駅員に事情を話すと、まだ若いその彼は、「前回降りた時にバッテリーが無かったんでしょう、出場時の改札機でうまく認識されなかったようです」 そういって前回乗車時の未精算分をケータイから引出処理してくれました。
「でもその時、扉は閉まらず、ちゃんと通過できたけど?」
「ああ、そういうことはよくあるんですよ」(それって欠陥では?)
「もしも、改札入るときにバッテリーがちゃんとあって、駅構内で通話したり乗車中にメールしたりして、降りるときにバッテリーが無くなっちゃってたら、どうなるの?」
「その場合はモバイルSuicaは使えません、別途現金で料金を払っていただきます」
「改札に充電器は備えてないの? ケータイが起動しさえすれば、今みたいに有人改札で精算処理できるでしょ?」
「そういうサービスはしていません。構内のコンビニで充電器を買っていただくしかないですね。くれぐれもバッテリーの管理は(声を強めて)『自己責任で』お願いします!」

別の日、たまたま某駅の構内にドコモの「モバイルSuicaサービスのご案内」ブースがあったので、ちょっと寄って尋ねてみると、対応したドコモのスタッフらしき若者は「その通り、バッテリーが充分ないとモバイルSuicaは使えないのです」
すると隣にいた別のスタッフが「いや、バッテリーが切れていても予備電力で動作するようになっているから大丈夫です。ちゃんと改札を通過できます」

結局案内ブースの彼らにも、バッテリーとの関係はよくわからない模様。後でJR東日本のサイトで確認すると、「ご利用に際してのご注意」というところに、次のような記載がありました。

「携帯電話機の電池残量には十分にご注意ください。万一、改札口を入場後、携帯電話機の電池が切れ、改札機等での読み取りが困難な状態となった場合、ご利用になった区間の運賃(必要により料金)の全額を現金でお支払いいただくことになります。」

結論。モバイルSuicaの便利さは享受させてもらっていますが、駅構内では通話は控えるなど、バッテリー残量に神経を使うのが難。盛んにPRしている割に、わざわざ敷居を高くしている(ビューカードに加入しないと使えない)のはマイナスポイントですし、情報が末端に行き渡っていない(JRの駅員もドコモのスタッフも知識に差があり)ということもわかりました。

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