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2006.01.26

中小企業48万社が増税に?

このブログで「サラリーマン法人潰し」として紹介してきた今回の税制改正の問題項目「同族会社役員報酬の損金算入制限」について、相変わらずマスコミ等では触れられていません。唯一1月11日の読売が紙面を割いて取り上げているくらいでしょうか。

060126

報道するマスコミの人々自身がサラリーマンなので、感覚的に理解できないのかもしれません。また、影響を受けるのが大企業なら経済団体等を通じて声を上げるところでしょうが、ターゲットとなった中小企業群が団結して声を上げるすべのない集団であることも、反対の声が盛り上がらない一因でしょう。その意味では、財務省は狡知に長けてると言っていいでしょう。

東京税理士会はこの改正案に対し次の理由から反対しています。
1.国民に改正の情報提供を行わない突然の改正であること
(国民どころか議員に対しても期限の数日前に持ち出した案件のようです)
2.起業意欲を著しく減退させること
(言わずもがな。法務省・経済産業省による起業促進策も、予算を握っている財務省のおかげでパーか)
3.オーナー社長の給与と一般サラリーマンの給与で税負担に差を設ける理由がない
(この改正案に対し、財務官僚のひがみの発想と被害者意識が見える、と感想をもらした方がいました)
4.会社は給与として社外流出しているので担税力がない
(ここは問題ですね。担税力への配慮は必要でしょう)
5.給与所得控除額相当額が法人税の課税所得を構成するという課税上の論拠がない
(論拠が無くても課税するのが国家というもの、と言った方がいました。しかしそれでいいのか?)

財務省は、全国240万社の中小法人のうち影響を受ける既存会社は約5万社と説明しているようですが、税理士会の試算によると、
・影響を受けるのは少なくとも48万社
・1社当たりの増税額は約79万円
とのこと。財務省はホクホクでしょう。

ところで、冒頭にあげた1月11日の読売新聞という全国紙で、財務省の課長が、首をかしげたくなるようなことを述べています。
「強引だと言われた04年度改正の反省はあり」(ホントか?)
「党関係者には十分説明はした」(議員側は、説明は受けたが内容は理解していない、というのが実態)
「合理的経理がされている大企業とそうではない企業を同列視することはできない」(だからといって課税する理由は何?)
「税理士会は法人設立による節税策を長年PRしてきた手前、反対しているのではないか」(そのような事実はないし、税理士以前の国民的常識の部類であり、PRしてきたのは学者やマスコミでは?)

この記事を読んだある方から「せせら笑うかのようなこの言い草はなんたること、国家公務員としての品格を欠いた発言だ」と怒りのメールをいただきましたが、私たちが納めた税金の一部がこのような役人の給与に使われているかと思うと、ちょっと残念です。

中小企業の利害を代弁するのが私たちの役割ではありません。個人事業者で法人成りを選択しなかった人々の中には、今回の改正に賛同する人もいるかもしれません。増税自体がけしからんというというわけではなく、税理論的におかしく時代の流れに逆行するような税改正を、プロセスを無視して傲慢な態度で強引に行おうとする官僚のやり方に国民として憤りを感じている税理士が多数いるということなのです。

p.s.
ある方から、『こういう見方もあるのでは』、とご意見をいただきましたのでご紹介。

『日経1月16日朝刊1面に、次のような記事がある。

◆「連載:ニッポンの力 15 ~波は霞ヶ関にも~」
前例踏襲主義の代名詞・霞ヶ関にも変化の波は打ち寄せる。昨年、半世紀ぶりに改正された会社法。従来なら改正作業は法学部出身の文系官僚が仕切るのが「村の掟」だった。今回は東大工学部出身の技官で、93年に通産省に入省し、その後、00年に法務省に出向した郡谷大輔(35)が手掛ける異例の展開をたどった。通産省時代にベンチャー振興に携わった経験から得た結論は、国が上からカネを落としても「会社は育たない」。むしろ「すべての会社が使う道具である法律を整備すべきだ」と考えた。数学的思考に基づく論理能力と粘りで、文系官僚が二の足を踏んでいた条文改正を3年がかりで練り上げた。文系官僚からは「伝統的な法秩序を理解していない」との批判が出たが、M&Aなどに対応しやすい法律を作ることは時代の要請でもあった。物事を変えるのに臆病になりがちな霞ヶ関で「とりあえず制度を変える」ことが優先された。かつてなら考えられない光景がここにあった。

こんな記事を読んでしまうと、今回の〝騒動〟は、「税の公平性」云々の建前論よりも、霞ヶ関内での、若き理系エースに対する文系官僚の「嫉妬・恨み・やっかみ・いやがらせ」から起こった「新会社法施行の出鼻を挫いてやれ作戦」とも読みとれるのではないか。』

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