錯乱の税制-サラリーマン法人潰し?
情報によると、今月15日に公表される自民党税調の18年度税制改正大綱に、中小企業に大きな影響を及ぼすと思われる項目が財務省提案で盛り込まれそうになっているといいます。
・同族会社の留保金課税を廃止する
・引き換えに、同族会社の役員報酬のうち給与所得控除額を損金不算入とする
先年の「不動産譲渡所得に係る損益通算および繰越控除制度の廃止」と同じく唐突な提案(しかし盛り込まれれば実現され、影響は必至)ですが、同族会社の留保金課税の廃止は以前から要望されていた項目で、その代替財源として役員報酬に目をつけたものと思われます。11月25日の政府税調の答申『法人の設立が容易になる中で、個人形態と法人形態との税負担の差に由来する不公平は是正すべきである。』を踏まえたものでもありましょう。
この伏線かどうかわかりませんが、11月23日の日本経済新聞17面に、まるで財務省の見解を代弁するかのような次の要旨のコラムがあります。
・新会社法は一人会社を全面的に解禁するので「法人成り」が飛躍的に増加する。
・「法人成り」とは、法人段階で役員報酬を損金にし、役員側で給与所得控除を受けるという「二重の経費控除」である。
・ちまたではこの手の節税術が紹介されており、相当数の個人事業主が虎視眈々と「法人成り」を狙っている。
・こうした同族会社の役員報酬の損金算入については厳しい対応をすべきだ。
この節税術(?)は、今さら紹介されるまでもなく何十年にもわたって利用されてきた中小企業の合法的常識ですから、コラム筆者の意図の理解に苦しみます。「超」納税法の野口悠紀雄氏や「黄金の羽根」の橘玲氏はじめ各所でいろいろな方が提唱されている「サラリーマン法人」への反発でしょうか。
そもそも今回の会社法改正は、「起業促進」という側面も持っていたはずです。起業ブームに水を差すかのようなこの提案、財務省の錯乱?